夏彦君(左)と彦星君(右)(提供)
夏彦君(左)と彦星君(右)(提供)
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夏彦君の遺骨と遺品(提供)
夏彦君の遺骨と遺品(提供)

 飼い主が毎日どんなにペットの健康管理に気を配ってあげても、犬やの寿命は人間より短く、いつか別れの日が来てしまうのは避けられない。家族同然の存在を失ったダメージから長い間立ち直れず、つらい思いを抱える人も多い。しかし、小さな行動の積み重ねで少しずつ心を上向かせることもできるという。昨年、愛猫を病で亡くし、その後、ペットロスを日ごとに克服しつつあるという経験者に話を聞いた。

【写真】「大好きだよ」と言って撫でてあげたいのに、あの子はもういない

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「もう二度と元気なあの子には会えないんだ……そう思っただけで悲しくて、苦しさで胸が締めつけられるような気持ちでした。昨日、撫でてあげたらとってもうれしそうだった、あと少しで退院できると信じていたのに……。自分ではどうにもできない状況に涙があふれて止まらず、本当につらくてたまりませんでした」

 都内のIT企業勤務の伊藤香織さん(仮名)は昨年、コロナ禍で愛猫「夏彦」君をなくした。伊藤さんは40代半ばで一念発起し、都心に猫が2匹まで飼えるマンションを購入。夏彦君が亡くなるまで、先に飼っていたオス猫「彦星」君と1人と2匹暮らしだった。

 2匹ともいわゆる保護猫。先に飼った彦星君は、福島県双葉町の出身。2011年末、東日本大震災の原発事故の影響による立ち入り禁止区域で、置き去りにされた動物の保護を環境庁が一時的に許可した日に保護された猫だった。吸い込まれそうなグリーンの瞳に精悍な顔立ちのキジトラ猫で、どこか堂々たる風格を漂わせていた。

「外見では分からない猫エイズのキャリアがありましたが、だからこそ飼ってあげたいとも思いました。なにより、そのイケ猫ぶりにひと目ぼれ! 連絡をくれた保護猫活動を行なう知人を介し、1カ月のトライアル期間を経て家に迎えました」

 黒猫の夏彦君が伊藤さんのもとにやってきたのは、それから4年後。同じ知人を通し、やはり猫エイズキャリアのある当時推定3~4歳のオスの保護猫だった。

 こうして始まった2匹の猫との生活。それは想像以上に豊かな時間を伊藤さんにもたらした。

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