インターネット上で展開されるさまざまな陰謀論。冷静に考えればうそとわかるはずなのに、信じてしまう人がいます。どうして単純な陰謀論に引っかかってしまうのでしょうか? 近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が、自身の経験をもとに解説します。
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新型コロナウイルスやワクチンに関しては、インターネット上でさまざまな陰謀論が展開されています。「人々の生活を監視するためにコロナワクチンにはマイクロチップが含まれている」この陰謀論も冷静に考えればうそとわかるはずなのですが(そもそも注射液に含まれ、注射針を通過できるほどの微小なマイクロチップは作製できない)、アメリカでは約9%の人が信じているというデータもあります。
どうしてこんな単純な陰謀論に引っかかってしまうのか、みなさんは不思議に思うかもしれません。実は陰謀論はとても魅力的で、知ったときの「自分だけが世の中の真実に気がついてしまった」と感じる高揚感や「真実に目覚めた」優越感は何者でもなかった自分を特別な存在に変えてくれます。
かくいう私もかつて、陰謀論にどっぷりハマった時期があります。それは小学校5年生のときでした。
いつも通う近所の理髪店のおじさんが、お客さんがいなくなった店内で神妙な面持ちで話しはじめました。
「大塚くんは秘密を守れるか?」
小学生の私はその質問だけでドキドキしました。
誰にも言わないと約束した内容はまさに陰謀論でした。
「アメリカの米軍基地にはUFOの着陸場所がある」
「その証拠に、誤ってUFOが着陸した場所にミステリーサークルができている」
「UFOは人間の魂を運んでいる」
あの時、自分だけで世界の真実を知ってしまったという高揚感は今も忘れられません。自分は選ばれた人間になってしまったのだ、心からそう感じました。
本当に信頼している友人にだけ、その秘密を教え「自分たちだけが世の中の真実を知っている」優越感を味わいました。