中野さんはさらに「運のいい人はいまの自分を生かす」「運のいい人は自分を大切に扱う」「運のいい人は常識よりも自分を上に置く」「運のいい人はいい加減に生きる」「運のいい人は自分の好みを大事にする」と語っています。これらはすべからく、ナイス・エイジングに必要なことです。つまり運のいい人(運がいいと思える人)こそが、後半の人生を生きやすいということになります。

 さて「あなたは運が強いですか」と問われたら、どう答えるでしょうか。私自身は85年間を振り返ってみて、運が強いほうだったと思います。

 セレンディピティー(Serendipity)という言葉をご存じでしょうか。「求めずして思わぬ幸運にめぐり合う天性」(現代英和辞典、研究社)というのが日本語訳ですが、私にはそのセレンディピティーがあったと思うのです。太極拳の師、楊名時先生との出会いがそれです。私にとって、人生最高の幸運でした。その後の楊先生との交流が、私の人生にどれだけの輝きを与えてくれたことか、感謝するばかりです。

 私はセレンディピティーとは誰もが持っている天性だと思います。ただ、それに気づいていないだけです。ぜひ、あなたのセレンディピティーを発掘してみてください。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2021年7月2日号

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