帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
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松下幸之助氏 (c)朝日新聞社
松下幸之助氏 (c)朝日新聞社

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「運の強さについて」。

【写真】松下幸之助氏

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【天性】ポイント
(1)松下幸之助氏は人材の登用で運の強さを参考にした
(2)公平に起きる運・不運をどう生かすかが違ってくる
(3)誰もが持っている、幸運にめぐり合う天性を発掘しよう

「経営の神様」と言われた松下電器産業(現パナソニック)の創業者、松下幸之助氏が人材の登用にあたって、その人の運の強さを参考にしたというのは有名な話です。

 著作の『人事万華鏡 私の人の見方・育て方』(PHP文庫)のなかでも「人を採用するにしても、登用するにしてもそういうこと(運の強さ)を加味して考えることが大切だと思う。(中略)非常に大事な仕事をまかせるといったような場合には、やはり運の強い人を選ぶということがより望ましいといえよう」とはっきり言い切っています。その後で「けれども運が強いかどうかはちょっとやそっとではわからない。第一、先にもいったように、運というような、そんな非科学的なものはありはしないという見方も、あながち否定はできない」とフォローしていますが。

 果たして運の強さというのは、非科学的なものなのでしょうか。そこで脳科学者の中野信子さんが書いた『科学がつきとめた「運のいい人」』(サンマーク文庫)という本を読んでみました。

 中野さんの考えは「運・不運というのは、だれの身にも公平に起きていて、その運をどう生かすかに少なくとも人は主体的にかかわっていける」というものです。なるほど、その通りだと思いました。

 例えば、がんが見つかったとします。多くの人はその不運を嘆きます。しかし、なかにはがんと向き合うことで、新しい人生の意味を見いだして、がんが自分を変えてくれたと、その幸運を喜ぶ人もいるのです。

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