A もともとは「野巫」と書いた
中世までは、病気になると巫女(みこ)が祈祷で治療にあたりましたが、腕のよくない巫女は田舎者という意味の「野」をつけて「野巫(やぶ)」と呼ばれました。これがのちに、腕のよくない医者にも使われ「野巫医者」と呼ぶようになったといわれています。また、野暮な医者がなまったとする説もあります。「藪」の字が当てられたのは、田舎をより強調するためという説や、逆効果という意味の「藪蛇」からきているという説もあります。
Q 「皮」と「肉」で遠回しな批判になるのはなぜ?
A 悟りではなく「皮」や「肉」しか得ていないという批判が元
「皮肉」は禅宗の開祖とされる達磨(だるま)大師の言葉が元になっています。大師は、弟子が修行で得たものを皮、肉、骨、髄と評価しました。骨と髄は仏教の根本をしっかりと理解したことを意味し、皮や肉は体の表面にあることから考えが浅いことを意味しました。ここから、遠回しに批判することを「皮肉」と言うようになったといわれています。
Q 「鳥居」は「鳥」と関係あるの?
A 悪霊を祓(はら)う鶏の止まり木
かつて、悪霊は夜明けとともに去っていくと考えられ、夜明けとともに鳴く鶏は悪霊を祓う力があると考えられていました。そこで、鶏の止まり木を意味する鶏居(鳥居)を神前に置いたといいます。ほかにも、インドの寺院に見られる「トラナ」という門を起源とする説など、諸説あります。
Q 「億劫」という言葉にはなぜ単位の「億」がある?
A 仏教用語の「百千万億劫(こう)」が省略された
面倒くさくて気が進まないことを「億劫」といいますが、なぜ単位の「億」が使われるのでしょうか。もともとは、無限に長い時間を表す仏教用語の「百千万億劫」を省略した言葉で、気が遠くなるほど面倒なことを表しています。「劫」だけでも永遠に等しい仏教の最長の時間の単位で、その1億倍なので想像もつかない時間の長さです。
Q 地上を歩くのに、なぜ「地下足袋」?
A 地下の炭鉱で使われていたから
今でこそ、建設現場などで広く使われている地下足袋ですが、1923(大正12)年の販売開始当初は地下の炭鉱で人気を集めました。開発したのは福岡県の日本足袋株式会社で、試作段階から工場の近くにあった三池炭鉱の労働者に意見を求めるなどして誕生したのが「アサヒ地下足袋」です。日本足袋社は、地下足袋のゴム加工技術を生かして、現在のブリヂストンへと成長しました。なお、地面で直に履く足袋なので「じか」に「地下」を当てたとする説もあります。
文/美和企画
※『みんなの漢字』2013年11月号から