報道陣に公開された選手村の横では、市民らが「東京五輪反対」などの看板を掲げていた(撮影/写真部・松永卓也)
報道陣に公開された選手村の横では、市民らが「東京五輪反対」などの看板を掲げていた(撮影/写真部・松永卓也)
この記事の写真をすべて見る
マンションの1室が数部屋に分けられ、共用スペースには白いテーブルと五輪カラーの椅子が置かれている(写真:大会組織委員会提供)
マンションの1室が数部屋に分けられ、共用スペースには白いテーブルと五輪カラーの椅子が置かれている(写真:大会組織委員会提供)

 外部と隔離されている選手村だが、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを抱えている。家族内感染と同じ状況が生まれるという懸念だ。AERA 2021年7月5日号から。

【写真】共用スペースには白いテーブルと五輪カラーの椅子…選手村の内部はどうなっている?

*  *  *

 東京五輪・パラリンピックの選手村(東京・晴海)が6月20日、報道陣に公開された。銀座から2.5キロの好立地で、約200の国・地域から1万人を超える選手らが入村する。

 居住棟は21あり、約3800戸の部屋にそれぞれ2~8人が宿泊する。個室はシングルかツインで、バス・トイレは共同だ。選手の睡眠を妨げないよう床面ぎりぎりまでのサイズの遮光カーテンを取りつけた。大会組織委員会の北島隆ビレッジゼネラルマネジャー(VGM)は「日本人らしいこまやかなおもてなしで迎えたい」と話す。

 心配なのは新型コロナウイルス感染拡大のリスクだ。全てのベッドルームには窓があり、組織委は30分に1度の換気を呼びかける。24時間利用できるメインダイニングホールは当初の4300席から3千席に座席数を減らし、アクリル板を設置。唾液(だえき)による抗原検査を毎日実施し、陽性者らは村内の発熱外来でPCR検査を受ける。陽性が出たら、軽症者は組織委が借り上げたホテルで療養し、症状が重い場合は村外の病院に入院する。

 だが、埼玉医科大学教授で、同大総合医療センター総合診療内科の岡秀昭医師は言う。

「選手村ではホテルのように個室に泊まるのだと思っていましたが、実際は共有スペースがあり、バス・トイレも共有するシェアハウス状態だと知り、驚きました。これまで診てきた患者さんは家族内感染も多く、選手村では同じ状況が生まれ、感染者が1人いればすぐに感染が広がる危機的状況です」

■室内は監視できない

 選手村ではアルコールの持ち込みやインターネット通販での購入を容認。組織委の北島VGMは「居室などプライベートな空間で飲酒するのは可能」と話す。国際オリンピック委員会(IOC)は組織委に食料品宅配サービス「ウーバーイーツ」の利用を認めるよう要求しているとの報道もある。飲酒は「基本的に1人で」とのことだが、部屋の中までは監視できず、共有スペースなどで複数人が集まって祝勝会や反省会を開く光景は想像に難くない。

次のページ