
「令和の時代に“なぜ探偵もの?”って思う人もいるかもしれないですが、探偵ものっていつの時代でも、裏社会を映す鏡みたいになっている。今だからこそ表現できることもあるし、今の時代ならではの問題も描いているので、それがふわっとした残り香になれば……。監督の、『昭和の時代に観た、男気のあるカッコいいおじさんの映画を撮りたい!』という情熱から生まれた作品ですが、今振り返ると昭和って、善も悪もすべてが前に進むエネルギーになる、闇鍋のような時代だったのかなって(笑)。懐かしさも新しさも両方入っていて、詳しく説明していない余白の部分もある。そこは、お客さんに勝手に想像してもらえたら」

現在48歳。年齢を重ねていくうちに、「お節介でいたい」と思うようになったという。若い世代に対しては、パワハラ、モラハラと言われようと、自分が学んできたことは還元していこう、と。
「口伝という言葉もあるように、考えや思い、技術っていうのは、口から口で伝わっていくものだと思うんです。僕も、いろんな方から、良いことも嫌なことも体験させてもらって、整理して残ったものが、今の僕を作っている。だから、多少面倒くさくてもタイミングを考えて、若い人にもストンと落ちるような言葉選びをして、思いを伝えていきたいです。今の時代、リスクはありますけど(笑)。例えば、スマホばっかりいじってて誰ともコミュニケーションを取らないスタンスって楽じゃないですか。でも、その敏感になりすぎているハラスメント関係の網目を縫って、ちゃんと言いたいことは言う。そのためには、うまく脇を甘くしておかないと駄目なんじゃないかなって思います。おじさんとしては、突っ込まれやすいような隙を作っておかなければって(笑)。ちょっとした服装でも、『それ変ですよ』とか突っ込まれつつ、たまにはこの豊富な経験値を生かして、何か心に引っかかるようなアドバイスができたらなって思います」
(菊地陽子 構成/長沢明)
※記事前編>>北村有起哉が語る俳優の矜持 「帰っていいよ。代わりはいくらでもいる」はコチラ
※週刊朝日 2022年12月16日号より抜粋