■様々なコストが上乗せ

 ほかにも変額保険には様々なコストが上乗せされている。まずは投資にかかる費用。投信の信託報酬(手数料)にあたるものだ。男性の場合は「日本株式型」「積極運用バランス型」「世界株式プラス型」など複数の投資プランが選べ、年0.13~0.9%の手数料がかかる。

 これだけなら一般的な投信と大差ないが、そこに変額保険特有のコストが加わる。投資に充てる資金を保険とは分けて管理する「特別勘定」の運用費や、運用に失敗しても「最低保障」の分を確保するための費用などだ。男性の保険は、保険料のうち投資に充てる分に0.75%の手数料が上乗せされる。

 実は保険のコストも割高だ。先ほどのケースだと、月4千円弱になる。死亡保障が同条件のネット生保だと半分ですむ。

 もうお分かりだろう。投信を個別に買った方が余計な手数料がかからず、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用して60歳以降に引き出せば運用益に税金もかからない。「マネー情弱」から脱出する手段を身につければ、よりお得に資産運用ができる道が開けるのだ。

 本誌のアンケートでは「強制的に一定額を貯蓄に回し、もしもの時は結構な額の保険金にもなる」など肯定的な意見もあったが、「結局は販売サイドに有利な商品だと思う」「保険と蓄財は切り離して考えるべき」と否定的な意見も目立った。

『腹黒くないFPが教えるお金の授業』の著書があるFPの岩城みずほさんは「若者や子育て世代は、投資に回せるお金は多くありません。わざわざ高コストのパッケージ商品に入らなくても、掛け捨て保険とつみたてNISAやiDeCoで十分。カモになる前に、自分の頭で考えてみましょう」と話す。

 先のFPが本当に親身に相談に乗っていたなら、男性に変額保険を勧めることはなかったはずだ。表向き親切なFPも、懐に入る手数料のうまみからは逃れられない。筆者が入手したある生保の内部資料によると、トップクラスの代理店には最大で初年度保険料の82%が渡る。2年目は7~21%、その後も20年目まで2~7%が入る。

■代理店が潤う仕組み

 変額保険は契約期間が長いほど、代理店の懐が潤う仕組みにもなっている。そこで、いま代理店の間で「払済(はらいずみ)話法」と呼ばれる悪質なセールストークがはやっている。実は男性もワナに引っかかってしまった。

 男性はFPから「積み立て運用で資産を増やしながら、息子様の大学進学などの教育資金にも充てられる」と勧められ、いったん80歳までの契約を結んだ。だが、それまでに長男は大学を卒業するだろうし、自身も「老後」に入っている。

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