昨夏にはスペインの半数以上のクラブ、さらにPSGやアヤックス、バイエルン・ミュンヘンといった強豪が接触していた。しかし失意のシーズンでその評価も下降(『transfermarkt』の市場価値は3000万ユーロから1500万ユーロまで下落した)。さらにオリンピックの関係もあり、今夏に手を挙げるクラブはそれほど多くないことが予想される。
そんな中で先日スペイン日刊紙『ラ・ラソン』は、移籍先候補としてマジョルカ、エスパニョール、レアル・ベティスの名前を挙げていた。これを基に考えると、マジョルカは久保がスペインで最初に所属したクラブであり、世界中に名を知らしめたクラブ。環境面では何ら心配はない。エスパニョールは過去にマルコ・アセンシオやルーカス・バスケスといった“モデルケース”も存在する。ベティスに関しては、来季ヨーロッパリーグに出場することも大きなプラス材料だ。
だが、それぞれに不安も。マジョルカは当時と所属メンバーも監督も変わっている。さらにエスパニョールとともに1部昇格組であり、シーズン通して苦しい戦いが予想される。能動的に動かす試合は多くないだろう。劣勢の展開を強いられ、攻撃陣は数的不利の状況を1人で打開する力が求められそうだ。そうなれば、ヘタフェと同じような境遇に陥る可能性も否定できない。
ベティスは記事の通りペジェグリーニが実践するスタイルがフィットするし、知将の下であらゆることを学べるだろう。欧州カップ戦の経験値も手にできる。とはいえ、フランス代表経験もあるナビル・フェキルがエースとして君臨。久保と同じような役割を担う彼がいる限り、スタメン奪取は難しい。その他にもセルヒオ・カナレスら実力者揃いのため、出場機会を得られない可能性もある。それは本人が最も望んでいないことだろう。
20歳という年齢での移籍、特にレンタルは非常に難しい選択を迫られる。上位を狙うクラブでは必ずトッププレイヤーとの争いに巻き込まれ、下位クラブでは戦い方が限定される。若い力を引き入れるのはクラブにとっても賭けだ。ましてやコロナ禍で損失に敏感になっていることもあり、他クラブから引き入れるよりも下部組織の才能を信じる方がベター。久保の去就は移籍市場終盤まで決まらないかもしれない。