高村氏はこの条件を「やむを得ない」と判断した。
だが、北側案を安倍首相に示すと、「これでは現実には集団的自衛権の行使はできない」と受け入れなかった。高村氏は、「これを受け入れないと自公連立が持続できない」と強く訴え、岡崎氏も懸命に安倍首相を口説いて、やっと同意を取りつけた。
自民党が多数派だから、この安保法制は成立したのだが、野党はもちろん、少なからぬメディア、有識者たちの批判は強かった。
憲法違反、というわけだ。
そこで私は、「反対」を打ち出している代表的な2紙のトップ記者にこう言った。この安保法制を否定すれば日米同盟は維持できなくなる。日米同盟が破綻すると、日本の防衛力を2倍、3倍に拡大しなければならない。現在は米国の核の傘に守られているが、自前の核兵器を持たざるを得なくなるのではないか、と。いずれも不満そうではあったが、何とか同意してくれた。そして、何人かの学者も同様に説得した。
こうした経緯があったことをここに記しておきたい。
田原総一朗(たはら・そういちろう)/1934年生まれ。ジャーナリスト。東京12チャンネルを経て77年にフリーに。司会を務める「朝まで生テレビ!」は放送30年を超えた。『トランプ大統領で「戦後」は終わる』(角川新書)など著書多数
※週刊朝日 2022年12月16日号