実際、「不受験」を打診された子もいる。試験で適切な配慮が受けられるという確信を、教師側も持てなかったからだ。

「『受けない』という選択肢からしか選べない子がいる。これは明らかに排除です」(高木氏)

 実施要項では、特別支援学校や特別支援学級在籍の生徒は、「希望による受験」とされた。つまり、合理的配慮を求める前に、受験しなくてもよいとされたことになる。今や特別支援学級卒業生の約5割が普通高校へ進学しているにもかかわらず、都立高入試のスピーキングテストから「排除」された形だ。

 配慮から外れた子は他にもいる。2021年度の調査によると、東京都の中学校に在籍する日本語指導が必要な生徒は1002人。受験生もその3分の1いると推測される。しかし都教委のホームページには「ESAT-J」の多言語の説明はない。

 都教委のスピーキングテスト担当者は「学校からの要請により、英語版を用意したことはある」とした上で、「多言語のページはございません。日本語のみとなっております」と答えた。

 大規模な情報漏洩(ろうえい)の過去があるベネッセに、障害にまつわる情報が顔写真付きで収集されることへの不安も大きい。ベネッセの委託先が何社あり、どのような企業なのかは、保護者には明かされていない。また、経験不問で集められた「一日バイト」の試験官がみなセンシティブな情報を適切に扱うだろうか。

 反対運動は今も続いている。(ライター・黒坂真由子)

AERA 2022年12月12日号

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