静岡県熱海市の大規模土石流災害は、盛り土が崩壊して起きた。本来は安定した構造物であるはずの盛り土が、崩れ落ちたのはなぜか。土砂災害の危険がある場所は、把握しておくことが大切だ。AERA 2021年7月19日号から。
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なぜ、盛り土は崩壊したのか。
どす黒く猛烈な濁流が、住宅の密集する急峻(きゅうしゅん)な坂道を流れ落ちていった。7月3日午前10時半ごろ、温泉街で知られる静岡県熱海市の伊豆山(いずさん)地区を、大規模土石流が襲った。死者は計10人となり、いまだ18人の安否がわかっていない(11日現在)。
土石流発生から一夜明けた4日、静岡県は、土石流が発生した逢初(あいぞめ)川の上流付近には開発行為による「盛り土」があり、これを含む土砂の崩落が「被害を甚大化したものと推定される」との見解を示した。盛り土とは、斜面に土を盛り固め、人工的に平らな土地を造り出す方法だ。
熱海市によれば、崩落した土地一帯は、2006年に神奈川県内の不動産会社が取得、翌年に盛り土に関するものと見られる工事の届け出が出された。そして11年に現在の所有者が土地を取得したという。
崩壊した盛り土の量は約5万4千立方メートル。これを含めた約10万立方メートルの土石流が発生し、甚大な被害をもたらしたと見られている。
「盛り土は本来、安定した土の構造物。危ないものではありません」
と語るのは、地盤・斜面防災のコンサルタント会社「太田ジオリサーチ」(本社・兵庫県)相談役の太田英将(ひでまさ)さんだ。
■「雨」と「地震」で崩壊
太田さんによれば、谷や傾斜地を埋めた「盛り土造成地」は全国の至るところにある。ただ、特に宅地は「擁壁(ようへき)」と呼ばれる壁状の構造物で囲まれ、本来は危険なものではないという。
安定しているはずの盛り土が崩壊する要因は何か。太田さんは、「雨」と「地震」だという。
「両者に共通するのは『水圧』、つまり土の中の水の圧力です。そもそも盛り土内に水分が含まれていなければ、大雨が降ろうが地震が起きようが、基本的に盛り土が大きく崩れることはありません。それが十分に盛り土内の地下水が排水されていないと、地面が滑り崩壊が起きます」
実際に、大雨や地震で盛り土が崩れる被害は全国で相次いでいる。
05年9月、台風14号に伴う豪雨で、山陽自動車道で大規模な盛り土崩壊が発生し、周辺に住む3人が土砂にのみ込まれて死亡した。17年10月の台風21号では、大阪府岸和田市の造成地で盛り土が崩落し、車数台が水没、女性1人が死亡した例もある。