警告頭痛の症状には個人差がある。武蔵野赤十字病院脳神経外科部長の玉置正史医師はこう話す。
「ある日頭痛が生じ、いつものようになかなか治らず食欲もなく、近隣の内科を受診してCTを撮り、くも膜下出血が判明するパターンもあります。放置すれば、発症から24時間をピークに再出血が起きる可能性が高いです」
脳動脈瘤の破裂による大出血で、約3分の1が死亡し、3分の1に後遺症が残り、3分の1が元気に回復して社会復帰できるとされる。
「40代後半から発症が増えますが、ホルモンの関係で60代以降は女性の比率がやや高い傾向があります」(津本医師)
脳動脈瘤の発生や破裂のリスク因子はあるのだろうか。
「くも膜下出血の原因である脳動脈瘤の発生に遺伝性はないとされていますが、血縁者で発症した人がいる場合には脳動脈瘤を持っている可能性が高まるとされています。高血圧や喫煙、多量の飲酒も動脈瘤を増大させ、破裂させるリスク因子です」(玉置医師)
腎臓に嚢胞がたくさんできてしまう「多発性嚢胞腎」がある場合も脳動脈瘤を合併しやすいため注意が必要だ。
くも膜下出血発症後の後遺症は、出血量や出血した部位、発症から治療に至るまでの時間などによって異なってくる。
「脳の表面に出血が多かった場合、ばらまかれた血液によって脳の血管がダメージを受け、脳血管攣縮を起こすことがあります。その場合、脳の中の多くの動脈が細くなって血液の流れが悪くなり、脳梗塞と同じ状態になります。出血部位によっては、失語症や運動麻痺などの後遺症が残ることがあり、その場合、リハビリも脳梗塞に準じたものになります」(津本医師)
運動麻痺や失語症、記憶障害、注意障害といった高次脳機能障害が残ると、本人や家族もそれまでどおりの生活に戻ることは難しくなる。患者だけでなく、周りで支える家族の生活のパターンも大きく変わってしまう。
「症状や後遺症もさまざまで、寝たきりになる場合もあれば、高次機能障害により日常生活能力が全体的に発症前の80%まで落ちてしまう場合も。家の中の家事はできても、外に出ての仕事、とくに高い知力を要求される仕事は、現職復帰できない場合も多い」(玉置医師)