すでに多くの現任者が試験を受けており、公認心理師の登録者の71%は臨床心理士有資格者となっている。

 スクールカウンセラーの上野綾子さんもこの特例措置で受験し、公認心理師となった。臨床心理士として25年余のキャリアがあり、現在、週に3日は小学校で、1日は特別支援学校で働いている。残りの日も精神科クリニックで心理検査を担当するなど、多忙な毎日だ。

 スクールカウンセラーは学校の相談室で生徒や保護者と向き合うイメージだ。しかし、上野さんによれば、これは業務のごく一部。個別相談以外の時間は学校内を巡回し、子どもたちの様子を観察するなど、相談室の外にいることのほうが多いという。

「不登校やいじめ問題への対応を目的としてきたスクールカウンセラー制度ですが、最近は発達障害のお子さんが増えており、こちらのケアにも力を入れています。子どもの心理的な問題は授業中や休み時間の様子から、その兆候を知ることができます。このため、担任の先生から気になるお子さんについて、心理職の視点から、見てほしいと依頼されることもあります」

 早期に子どもの異変に気づき、教員や保護者などの関係者が一丸となって支援することでよくなる例を上野さんは数多く、見てきた。

「支援した子どもたちがその後、大学に進学したり、何年かたって就職し、元気にやっている、という話を聞くたび、心から嬉しくなります。この仕事をやっていてよかったと思う瞬間ですね」(上野さん)

 一方で、心理職の多くは非常勤で、収入が安定しない現状を問題視している。

「公認心理師制度ができたことで、この仕事が広く認知され、心理職の活用の場が増えることを期待しています」(同)

 なお、文部科学省は2020年から、スクールカウンセラーの選考資格として一番に公認心理師を挙げている。また、医療機関では精神科を中心に、公認心理師の業務で診療報酬がつくものが少しずつ増えるなど、その仕事が認められてきていることも事実だ。

 では、現任者以外の人が公認心理師をめざす場合、どのように学校を選べばいいのだろうか。ここでは学部卒後に入学する大学院にターゲットを当てた。

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