卓球で圧倒的な強さを誇るのが中国だ。女子は1988年に正式に競技種目になったソウル大会以来8大会ですべての金メダリストが中国人選手。銀メダルも96年のアトランタ五輪、04年のアテネ五輪を除き、5大会で中国人選手が獲得している。
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「中国は卓球の競技人口が3千万人以上いると言われています。プロを目指す子供たちは小学生の時から猛練習を重ねる。中学、高校と熾烈な競争を勝ち抜いた一握りの選手たちがプロ選手として活躍し、頂点に立つ選手が中国代表に選ばれる。中国国内では『金メダルを獲得するより、中国代表になる方が困難だ』と言われています。それほどハイレベルで、五輪では『金メダルを獲って当然』というマインドで選手は戦っています」(スポーツ紙の卓球担当記者)
東京五輪の女子シングルスに選出されたのは世界ランキング1位の陳夢と3位の孫穎莎。共に五輪初出場であることが選手層の厚さを物語っている。実はこの代表選考を巡っても中国国内で物議を醸した。19年にハンガリーで開催された世界卓球選手権で女子シングルスを制した劉詩ウェンが外れたため、中国版ツイッター・微博でこの話題に関連するハッシュタグが3億ビューを超えた。
盤石の中国に死角は見当たらないように思うが、「中国の金メダルを脅かす存在」として最も警戒されているのが、世界ランキング2位の伊藤美誠だ。16年リオデジャネイロ五輪の卓球女子団体で銅メダルを獲得。卓球史上最年少の15歳で五輪メダリストになったが、その後も目覚ましい成長をみせている。19年5月の中国オープン準々決勝で、当時世界ランキング1位の丁寧を撃破。10月開催のスウェーデンオープンでは、準々決勝で王曼昱、準決勝で孫穎莎を破った。決勝で陳夢に破れたが、フルゲームまで競う大接戦だった。同月のドイツオープンでも、18年世界ジュニア女子シングルス王者の銭天一に勝利を飾っている。1人の日本人選手が世界トップレベルの中国人選手たちを次々に倒すのは過去になく、衝撃的な光景だった。中国の卓球メディアから「大魔王」と名付けられているのは、実力を認められ、恐れられている証だ。