病院を受診する際、従来は受付窓口で紙の保険証を手渡ししていましたが、マイナ保険証では窓口に設置されたカードリーダーにカードをかざすだけで受け付けできます。このカードリーダーには顔認証機能もあり、カードのICチップに記録された『本人の顔写真データ』と『リーダーが読み取った顔の画像』を照合することで本人確認がされます。従来の保険証では、保険証の持ち主ではない別人が患者になりすまして受診したり、薬剤を入手したりするといった問題を防ぐ有効な手立てがありませんでしたが、マイナ保険証ならこうした不正を防げるわけです」

 また、牧氏はマイナ保険証のそのほかの利点として、「マイナポータルから過去の診療・薬剤の情報がわかる」「失効した保険証の誤使用がなくなり、診療報酬の過誤請求が防げる」「医療費が高額になった際に、限度額適用認定証を提出しなくても高額療養費制度が自動で適用される」ことなどを挙げる。

「来年1月からは電子処方箋の運用も開始され、病院や薬局が患者の過去の処方・調剤データを閲覧できるようになる。これにより重複投薬や併用禁忌を回避する効果も期待されます」

 一方で、マイナ保険証の利用の有無により、病院や患者の“選別”が起きる可能性もあると指摘する。

「医療機関がマイナ保険証の情報を活用するには、オンライン資格確認等システムの導入が必須です。対象となる医療機関などは全国に約23万施設あり、政府は来年3月末までの導入を義務付けていますが、運用率はまだ4割程度(22年11月時点)。残り数カ月で全ての医療機関に導入するのは、かなり無理があると言わざるを得ない。また、医療機関を受診している人のマイナ保険証の利用率もまだ1%程度。デジタル機器に弱い高齢者は、そもそもカードを作ってもマイナポータルを活用できないことも考えられる。病院側も患者側も、マイナ保険証を使えないことで不利益を被ることがないように十分配慮する必要があります」(牧氏)

(ライター・澤田憲)

※記事後編>>「マイナンバーの“勘違いとリスク”『利用範囲が広がれば漏洩も』」はコチラ

週刊朝日  2022年12月9日号より抜粋

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