マイナンバーの議論が紛糾している。
政府は10月13日、2024年秋までに健康保険証をマイナンバーカードと一体化させる方針を発表。さらに翌25年3月までに、運転免許証とも一体化させることを目標としている。
だが進捗状況は芳しくない。マイナンバーカードの普及率は22年10月末時点で、51.1%。交付開始から7年弱で約半数にとどまることを考えると、あと2~3年でどこまで普及率を上げられるのか。先行きに対する不透明感は強い。
背景には、マイナンバーに対する国民の疑問と不信がある。そもそもなぜマイナンバーが必要なのか、カードを発行することでどんなメリットがあるのか、そして個人情報は守られるのか。
マイナンバーに関する現時点での基礎的な内容を解説する。
Q1:マイナンバーって何? なぜ必要?
マイナンバーは、行政機関等が個人を特定するための番号(個人番号)のことだ。住民票を有する人々一人ひとりに12ケタの番号が付されており、2015年10月から郵送によってナンバーが通知されている。
マイナンバー発行の主な目的は、行政の効率化にある。これまで行政機関や地方公共団体などは、住民票コードや基礎年金番号、健康保険被保険者番号など、各自異なる番号で個人情報を管理していたため、個人の照合や情報の共有に時間や手間がかかっていた。これらをマイナンバーに一本化することで、「社会保障、税、災害対策の分野で効率的に情報を管理し、複数の機関が保有する個人の情報が同一人の情報であることを確認」しやすくすることが狙いだ(総務省HPから)。
これにより政府は「公平・公正な社会の実現」「行政の効率化」「国民の利便性の向上」の三つの利点があると説明する。例えばコロナ禍では、給付金の不正受給や支払いの遅延が問題になったが、マイナンバーによって個人情報を横断的に閲覧できるようにすることで、脱税や不正受給の防止・対策強化、行政サービスの迅速化が図られる。また、市民が行政サービスを利用する際にも、手続きが簡便になるという。例えば、介護保険に関する手続きなら、住民票や所得証明書、被保護者情報連絡票といった添付書類の提出を省略することが可能だ。