AERA 2021年8月2日号より
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 仕事や会社中心で50歳を迎えると、限界を感じ、壁にぶつかることがある。仕事とどう向き合い、どう働けばいいか。AERA 2021年8月2日号は「50歳からの戦略」特集。

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「この先、55歳になれば役職定年で給料は減額、出向する可能性だってある。もうあまり無理はしないつもりです」

 こう話すのは、埼玉県に住む会社員の男性(48)だ。中途入社のため、もともと出世には期待していなかったが、実際に年下の上司も増えてくるなか、むなしい思いがあると言う。

「定年までしがみついているとは思います。でも最低限、自分のやるべき業務をきちんとこなすだけ。50歳を前にそう考えるようになりました」

 これからの50代はその上世代とは違うと話すのは、企業研修などを展開するエマメイコーポレーション代表取締役の大塚寿さん(59)だ。

「いま65歳以上の人たちは、年金も最初から満額もらえたり、退職金も潤沢。会社員として申し分ない『上がり』でした。でもいまの50代は、『失われた30年』を経て、給料はぜんぜん上がらない。さらに、以前は課長代理だ、副部長だ、担当部長だとたくさんあったポストも、組織がフラットになり、約7割が課長にすらなれません」

 会社があてにならないのは、いまの40代以下はもっと顕著だ。多くの会社員の場合、出世争いは実質40代で決まり、50歳を迎えると、漠然とした不安が焦りに変わる。

「私の会社員人生って何だったんだろう、こんなはずではなかった、と立ち止まらざるをえない。それが50歳です」(大塚さん)

■「会社優先」からの脱却

 フィールドワークとして数多くの会社員にインタビューしてきた健康社会学者の河合薫さん(55)もやはり、50代で大きな節目があるという。

「自分ではまだ若いつもりだった人も、会社から突然、役職定年などで『実年齢』を突き付けられる。がんばって積み上げてきたものは後輩育成を名目に奪われ、崖から突き落とされる。現実を受け入れるのは簡単なことではありません」

 そんな危機から、どう抜け出すか。河合さんは「開き直れるかどうか」を挙げる。

 役職なんて贅肉みたいなもの。なくなることは「強制からの解放」と考え、もう好きなことをやろう、と。そして少しだけ他人に役立つこと、たとえば朝一番に出社し、掃除をしたり、後輩が困っていたら、自分の経験や技術をさりげなく伝え、縁の下で支えたりする。

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