金丸:安倍氏の「条件なし」発言の後、私は19年9月に訪朝し、朝日国交正常化交渉担当大使の宋日昊(ソンイルホ)氏と会いました。日本側から首脳会談に向けた何らかのアクションはあったかと聞きましたが、「全くありません」という答えだった。やはり安倍氏のパフォーマンスだったのかと思いましたが、私は首脳会談の実現じたいには大賛成です。ただ、そんなに簡単にはいかないから地ならしが必要です。まずは超党派の国会議員団が訪朝して、首脳会談に向けた環境づくりをすることが先決です。

木村:日本が主体的に北朝鮮との関係を構築していくためには、私も国会議員による訪朝団の編成が不可欠だと思います。

金丸:北朝鮮の高官に、日本の議員団を受け入れる用意はあるかと提案しました。私が決められることではありませんが、議員団のトップは二階俊博自民党幹事長が適任だと思うとも伝えました。すると、「大歓迎です。二階幹事長を団長とする議員団がわが国を訪問するのであれば、1990年の金丸訪朝団と同等の扱いをします」と答えたのです。つまり、金正恩氏が面談に応じる可能性があるということです。帰国してすぐに二階氏に伝えると、かなり乗り気でした。後は二階氏の決心次第だと思うのです。

木村:二階氏はチャンスがあれば平壌に行くくらいの覚悟は持っているんじゃないですか。それを本当は国民が後押ししないといけないと思います。けれども、対話を始めるにあたって、最大の課題となるのが拉致問題です。2002年に小泉氏が訪朝した際、北朝鮮は初めて拉致の事実を認めました。しかし、日本政府が認定した拉致被害者について、北朝鮮側は「5人生存、8人死亡、4人は未入国」との説明をくり返しています。

金丸:北朝鮮の高官によると、日朝首脳会談で金正日総書記が説明した調査結果はいまも翻ることはないと言っています。日朝間が不正常な状況に陥っているのは、拉致問題が原因です。北朝鮮側は「亡くなっている」と言っているのに対し、日本側は「生きている」と主張し、どちらも折れない。これでは対話の糸口は見つかりません。

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