離婚届を出さずに「卒婚」を宣言して、バリバリ仕事をしていく道もあったのに、きっちり離婚という区切りをつけたのは、自分の人生をもう一度、リセットしたいという気持ちの表れだろう。

 結婚していると、日本ではどうしても「夫の庇護(ひご)のもと」生きていると見られがちだ。それならばいっそ、独身に戻って自分の足で立って歩きたい。多くの女性も共感する面があるのではないか。

 それに対し、子どもがまだ小さいのに離婚を選択した市村・篠原夫妻には「意外だ」との声が目立つ。25歳の年の差婚。知り合った当初、市村が妻帯者だったため批判も浴びた。やがて、ふたりの子をもうけるなどして“おしどり夫婦”の呼称を得た。7年前、市村が初期の胃がんになったときは篠原の献身的な看護ぶりも話題となった。

 そんな彼女は、夫の後押しを受けてコンスタントに女優業を続けてきた。市村は高齢で子宝に恵まれたこともあり、ふたりの男の子を溺愛(できあい)。いつしか篠原は“男3人の家族”に疎外感を覚えていったのかもしれない。母と子どもたちから遠ざけられ、父親が家庭に居場所をなくす話はよくあるが、篠原の場合、その逆だったとも考えられる。昨年春、ドラマ撮影に臨んでいた彼女は自宅から車で10分ほどのところにマンションを借りた。当初はコロナ禍で家族への感染を恐れたためと言われたが、ドラマが終わっても彼女が自宅で生活することはなかった。

 今回の離婚で、市村が親権をもったことに世間はざわついたが、父と子どもたちとの関係のほうが強かったのであれば当然の成り行きかもしれない。そのことだけで彼女に「母親失格」の烙印(らくいん)を押すのは早計に過ぎる。

週刊朝日  2021年8月13日号

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