そのうえで試験を受け、合格したのちも応急手当てや心肺蘇生術なども習得しなければならない。
「アメリカの場合、就学児の約95%がスクールバスで学校に通っていますが、『子どもの安全な通学』ということに対する気迫が日本とはまったく違います。私はアメリカに暮らし、子育てをした経験からも、日本との違いを痛感しました」
■置き去り感知センサーの設置を
さらに太田さんは今回のような子どもの置き去り事故について、目視などのチェックだけではなく、別のアプローチも必要という。
「子どもの事故については、個人を非難しても事故の予防にはつながらない。人間の注意力に頼っていては、また同じような事故が起きてしまいます」
欧州には自動車の安全性能の評価を行うユーロNCAP(エヌキャップ)という組織があり、2022年から新たな審査項目として、子どもの置き去りを感知するシステムが加わる。それだけこの問題が注視されているということだ。
「これは乗用車の話ですが、世界的な傾向として、そういう方向に進みつつあります」
ただし、日本の状況に目を向けると、楽観はできないという。
「通園バスにはシートベルトもチャイルドシートもない状態ですから、とても置き去り感知システムがすぐ実装されるとは思えない。それに幼稚園や保育園の多くはそのための予算も計上していません。国が働きかけることで、自治体なりが助成して、システムがすべての送迎バスにつくようになるといいですね。社会全体がそれを後押ししてほしい」
(取材・文=AERA dot.編集部・米倉昭仁)