「子どもを預かる施設はどこもスタッフが不足していて、運営は大変です。薄給のうえ、労働時間も長いため、十分な数の保育士を確保することが難しいからです。限られたスタッフで園にいないといけない人を確保しようとすると、朝の忙しい時間帯は『じゃあ、園長行ってきて』みたいな状況になってしまう。私はドライバーはやりませんでしたが、毎日が綱渡りの状況であることは確かです」
■送迎バス問題の裏にあるもの
送迎バスの運転手も確保も問題で、常時「運転手募集」が貼られている園も少なくない。
「私が園長を務めていた園の送迎運転手さんは50歳くらいの独身男性で、介護が必要な高齢の両親と同居していました。そのため、限られた時間、限られた地域での仕事しかできない事情からドライバーさんをやっていた。薄給でしたが、介護しながらできる仕事がそれだけだったという感じでした」
送迎バス問題の裏にはそんな社会問題が色濃くある。
「バスによる園児の送迎は便利だとか、小さい子が保護者と歩いて登園するより安全だとも思う人もいると思いますが、事故の元にもなっていることも確かです」
もうひとつ、山崎さんが違和感を覚えたというのは事故後の園の対応だ。園長がマスコミの前で事故の状況を話したことは「園の危機管理ができていない」と感じたという。
「あの場で当事者がしゃべってはダメでしょう。保護者に対しては事故の状況を本人がきちんと説明しなければならないと思いますが、マスコミに対しては運営者の福祉法人の代表が話すのが普通です。なぜ、あんな対応をしてしまったのか。これから登園記録からお散歩の記録まで、当局によって徹底的に調べられると思いますが、そちらでもほころびが見つかる可能性が非常に高そうな園だと感じました」
■監査では「問題なかった」
山崎さんによると、保育園には「ヒヤリハット報告書」という文書があり、園での事故、事故未遂は必ず記録し、それを一定期間保管することが義務づけられているという。書式に沿って、発生日時、事故を起こした人、目撃者の名前を書いて、最後に園長が印鑑を押す。それに基づき、再発防止のためのミーティングも行う。