林:はい、なりました。
みうら:そこがビートルズの、アイドルではないロックなところでね。それを見てガツンと来たんです。それで一度はやらなきゃならない修行だと思って、インドに行ってシタールも買って、ひげも伸ばして帰ってきたこともあったんですが、そのときは中途半端で、撮影のたびに剃っちゃって。でもようやくこの年にして修行の機会がきたわけです。
林:すごく似合ってますよ。
みうら:ほんとですか? うれしい。でも、いまものすごく街中に警察官がいるじゃないですか? 僕、職務質問したくなるタイプみたいで、きのうも夜、コンビニに行こうと思ったら、職務質問受けました。歩いてるだけなのに、遠くから「どうしましたー?」って言われるんです(笑)。ひげがマスクからはみ出してるから、警察も声をかけたくなるんでしょうね。
林:「僕はこういう者です」って言えば……。
みうら:林さんだと「林真理子です」で済まされるでしょうが、僕の場合、怪しいんでしょうね。その上、車の免許証もないし、自分を証明できないんです。「文筆業です」と言うのもなんでしょ? 体から何か“分泌”してるような(笑)。
林:パスポートか、ご自分の文庫本を持ち歩くしかないですね。
みうら:わざわざですか?(笑) 僕、レンタルビデオ屋の会員にもなれないんですよ。以前は僕のDVDを集めたコーナーもあったんですけど、それでもダメで。「あそこに僕のコーナーあるんですけど、会員になれませんか?」と言ったんですけど、「ちょっと無理ですね」って断られて(笑)。
林:まあ、失礼な。
みうら:だけど、この存在があやふやな感じがある限り、ずっと昔のままでいられるというか。そうそう、今、ある銀行のキャッシュコーナーの「振り込め詐欺にご注意」のイラスト、見たことありません? サングラスにロン毛なんですよ。まったく僕のアイコンなんです。そりゃ、自分でも信用おけませんよ(笑)。
林:アハハハ、おかしすぎる。今日は楽しいお話をありがとうございました。職務質問されないようにお帰りください(笑)。
(構成/本誌・直木詩帆 編集協力/一木俊雄)
みうらじゅん/1958年、京都府出身。80年、武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞。イラストレーター、エッセイスト、ミュージシャンなどとして幅広く活動。ゆるキャラや仏像など多くのブームをつくる。『アイデン&ティティ』『マイ仏教』『さよなら私』など、著書多数。今年、『「ない仕事」の作り方』で本屋大賞「2021年発掘部門『超発掘本!』」。現在、「みうらじゅんフェス! マイブームの全貌展」が9月5日まで盛岡市民文化ホール・展示ホールで開催中。
※週刊朝日 2021年8月13日号より抜粋
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