アメリカでは、成績基準をクリアしないとスポーツに参加することができない。その成績基準を定めているのがNCAAで、各科目の成績の平均値であるGPAで2.0(100点満点で約70点、ディビジョン2の場合)以上を維持しないと、試合はおろか、練習にも参加できないという。スポーツに関わる時間も1週間で20時間以内に制限している。それはミーティングなども含めてだ。
「日本ではスポーツ推薦で入学した学生は、成績が悪くても、それをとがめない大学も少なくないですが、アメリカは全く異なります」
また、アメリカの大学には知名度を上げるためにスポーツを利用するという意識がほとんどないという。
「日本の大学にとって、『大学スポーツ』の位置づけというのは、あくまでも『広告』です。だから多額の強化費を支出するのです。ちなみに、日本では有望な高校生を勧誘するために大学がお金を積むという話を聞くことがありますが、仮にアメリカでそんなことが起こったら選手は一発で永久追放ですよ。大学もペナルティーを科される。NCAAは選手獲得の公平性が侵害されることに対しては非常に厳しい」
■年間1000億円の収入があるNCAA
文武両道を目指すNCAAは、経営的にも安定している。主な収入源は、先に挙げた男子バスケットボール全米選手権大会のテレビ放映権料で、毎年約1000億円の収入が入る。それは各大学に公平に分配されている。
5年ほど前、わが国でも「日本版NCAA」を目指して、UNIVAS設立に向けた動きが始まった。「国が目をつけたのはこの1000億円」と吉田氏は指摘する。
「スポーツ産業を活性化してお金を稼いでもらおう、というのが国の当初の目的だったのは間違いありません」
文部科学省はまず「アメリカのような大学スポーツビジネスで稼げる仕組みをつくってほしい」と、7大学に1000万円ずつの補助金を交付した。
「そのお金で『途方もないことだけれど、できるところからやってみよう』と思った大学もあったかもしれない。でも、『国が何か大学スポーツで旗を振っているから、補助金が出るなら、乗っかっておこうか』、というのが多くの大学でした」