NCAA出身のバスケットボール・八村塁選手(c)朝日新聞社
NCAA出身のバスケットボール・八村塁選手(c)朝日新聞社
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 東京五輪で100個を超えるメダルを獲得した米国選手団。米国が長年にわたり、幅広い競技で世界トップレベルの選手を送り出してきた背景には、全米大学体育協会・NCAAの存在がある。米国ではNCAAを中心に大学スポーツが盛り上がり、名門スタンフォード大などからたくさんのアスリートが輩出している。わが国でも「日本版NCAA」を目指そうと、2年前に大学スポーツ協会(UNIVAS<ユニバス>)が設立されたが、加盟大学の足並みは揃わず、存在感は薄い。米国と日本、大学生アスリートを巡る環境はどこが違うのか。UNIVAS設立準備委員を務め、内情をよく知る追手門学院大学客員教授、吉田良治氏が赤裸々に語った。

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「NCAAは東京五輪、前回のリオデジャネイロ五輪にも約1000人のアスリートを送り出しているんです。そのうち約400人がアメリカ人で、約600人は外国からの留学生。例えば、陸上のサニブラウン・ハキーム、バスケットボールの八村塁、渡邊雄太。彼らはNCAA出身者です。つまり、世界のトップアスリートが集まってくるNCAAの大会というのは、オリンピックの前哨戦なんです」

 名門・米ワシントン大学でアメフトのコーチを務めた経験を持つ吉田氏はこう語る。

 NCAAが設立されたのは1906年。当時、アメフトで学生の死亡事故が増え、安全対策を講じるための会議が設けられ、それが発展してNCAAが生まれた。

 現在、NCAAには約1100校が加盟し、参加選手は約50万人。全米の大学スポーツと競技を横断的に統括し、バスケットボールや野球、アメフトなど24競技で90大会を開いている。なかでもバスケのNCAAトーナメントは全米から注目を集め、東京五輪に出場した八村塁も、米ゴンザガ大の学生当時出場した。

■成績が悪いと練習にも試合にも出られない

「リオ五輪ではどの大学出身のメダリストがいちばん多かったか、ご存知ですか? スタンフォード大学ですよ。ノーベル賞学者の輩出を競うような世界トップレベルの大学がオリンピックアスリートを次々と生み出している」(吉田氏、以下同)

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