久保建英選手(C)朝日新聞社
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 6日に行われたサッカー日本男子の3位決定戦は、日本がメキシコに1-3で完敗した。53年ぶりの悲願のメダル獲得とはならなかったが、その悔しさを最も象徴していたのは、MF・久保建英選手(20)が試合後に流した涙だろう。準々決勝のスペイン戦で惜敗した時には、「出すこと全部やって負けたので、涙も出てこない」と語っていた久保。だがメキシコに敗れた後は一転、人目もはばからず涙を流した。その涙には、どのような思いが込められていたのだろうか。

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 この日の久保は試合終了の笛が吹かれるとピッチに倒れ込み、なかなか起き上がることができずにいた。顔を上げたときには、顔をぐしゃぐしゃにしてむせび泣く様子がテレビ画面にも映った。

「いつもは負けた時も淡々としていて、過去にあれほど涙を流した場面は見たことがありません。それだけこの大会に賭けていたんでしょう」

 久保を知るサッカーライターはこう驚く。久保は試合後のインタビューで、「今までサッカーやってきて、こんなに悔しいことはない」「自分が決めていれば、自分がPKを取っていたら、っていろんなことを考えました」と話した。

 こうした言葉から、前出のライターは、久保が背負ってきた重圧の大きさを指摘する。

「年齢が一番若いのに、『久保のチーム』として期待されていた。重圧は当然感じていたはずです。これまでは、U20ではジョーカーとして途中出場することが多く、A代表でもレギュラーになれていませんから、チームの勝利に対してそこまで背負っていない。これほど多くの重圧が久保にのしかかったのは、代表レベルでは初めてです。メキシコに負けて五輪が終わったことで、申し訳なさや責任感、久保が背負ってきたものがせきを切ってあふれ出たのだと思います」

 3日のスペイン戦で延長戦の末に敗れた際には、久保は三好康児選手と途中交代したため、ピッチの外にいた。ベンチの前に座り込み、両膝を抱えてじっとピッチを見つめていた。決勝に進めなかった悔しさはあったはずだが、この時は涙はみせなかった。

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思うようにプレーできなかった悔しさ