メダル獲得のためには多くの難しい技に挑戦して高得点を狙わなければならないが、同時に高難度の構成はリスクもはらむ。新体操団体日本代表・フェアリージャパンの東京五輪での戦いは、採点競技に共通する難しさを改めて感じさせた。
【写真】まるで「居酒屋のユニホーム」?酷評された東京五輪表彰式の衣装はこちら
2018年のルール改正でDスコア(難度)の上限が撤廃され、世界で表彰台に立つには目まぐるしいほど多くの技をこなさなければならなくなった。特に連携が伴う団体は、一つミスがあると負の連鎖が起き、一気に点数を失う怖さがある。採点競技にありがちな序列にかかわらず、その時々に行った演技の出来不出来で順位が大きく動くことはフェアであると同時に、選手にとっては常にミスへの恐怖を抱えることにもなる。
日本は、2019年の世界選手権ではこのルール変更を味方につけて成果を挙げている。強豪国にミスも出る中、完璧な演技をやり遂げた日本は、種目別ボールで史上初の金メダル、総合と種目別フープ&クラブで銀メダルを勝ち取ったのだ。自国開催の東京五輪に向け、メダル候補として日本が世界に認識される大会だった。
しかし、東京五輪の予選で、日本には大きなミスが相次いだ。ボール、フープ&クラブの両種目で、手具が場外に出てしまったのだ。予選7位となった日本は、8カ国が出場できる決勝には進出を決めたが、メダルを狙うには不安の残る内容となった。正選手だった横田葵子が練習中の負傷により離脱、予選の4日前に松原梨恵に交代しており、調整が難しかったのではないかと想像される。現在の演技の密度を考えると、一人選手が交代することはかなり大きい影響があるだろう。また予選の演技後、主将の杉本早裕吏は、 緊張感が大きかったことも吐露してもいる。
予選の点数は、決勝には持ち越さない。ミスなく演技できれば悲願のメダルを狙えるはず、そんな期待を背負って決勝に臨んだ日本。1種目目のボールでは少し乱れがあったものの、なんとか大きなミスなく持ちこたえ、42.750という得点を得る。1種目目終了時点で日本は6位、3位のベラルーシとはちょうど3点差だった。