世界各国でワクチン接種が進む一方で、デルタ変異株が世界中で猛威を振るっています。そんな中でわかってきたのが、ワクチンを接種することの意味です。ワクチンを接種しても感染を完全には防げません。ワクチン接種を完了した人が新型コロナウイルスに感染したときのウイルス量と非接種者のウイルス量に違いはなく、デルタ変異株に感染したワクチン接種完了者から他の人へ感染が移行します。しかし、ワクチン接種が完了した人が新型コロナウイルスに感染した場合、ほとんどが無症状か軽症なのです。
この報告は、ワクチンを接種することは「自分を守る」ためになることを意味します。ワクチン接種の義務化やワクチンパスポートの発行など、世界各地で議論になっていますが、定期的なPCR検査は継続した上で、ワクチン接種を済ませた人から制限を解除し、経済を回していくことが合理的です。
8月7日時点で、人口の49.7%が2回接種を終えたアメリカでは、政府は新型コロナウイルスワクチンの接種が最も重要な対策だとして接種を呼びかけており、入国する外国人に対してワクチン接種の義務化の検討中だといいます。また、ニューヨーク市長は、飲食店やスポーツジム、娯楽施設など屋内施設の従業員や顧客に対して新型コロナウイルスワクチンの接種証明の提示を求めることを発表しました。さらに、ワクチン接種を終えた人はアメリカからイギリスに入国する際の隔離が不要となるなど、ワクチン接種を済ませた人から制限の解除が進んでいるのです。さらに、12歳未満の子どもたちへのワクチン接種すら検討が始まっています。
8月6日時点で人口の72%が少なくとも1回のワクチン接種を終えたカナダでは、ワクチン接種済みの人の到着後の隔離を不要とする入国を9月7日から認めるという計画が発表されています。
日本はどうでしょう。7月末から新型コロナウイルス感染症の新規感染者数が増加していますが、幸い、ワクチン接種も進んできています。8月4日時点で人口の45.4%が少なくとも1回のワクチン接種を終え、8月5日時点で人口の32.9%が2回接種を終えています。そんな中でも、自粛が呼びかけられたままなのです。ワクチン接種を終えた人に対する緩和措置などは未だなく、ワクチンパスポートも発行は開始されたものの、帰国時の自主隔離の解除がなされない以上、使い道がないに等しい状況です。
ワクチン接種が進んできた今、接種を終えた人から制限なく活動できるにはどうしたらいいのか、日本でも他の先進国のように対応を協議してもいい時にきていると思います。
日本の経済は大ダメージを受けたままです。ワクチン接種を済ませた人から、規制を緩和してはいかがでしょうか。
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員