主役である選手にもこの姿勢は変わりません。アスリートファーストとうたう一方で、猛暑への配慮はされず、選手の健康よりも放映権が優先されている。あらゆる点において中身の伴わない空虚なスローガンだけが飛び交っているのが現実です。そして、先延ばしにした問題のツケを払うのは僕たち国民で、次の世代の子どもたちです。このままでは五輪も持続不可能なコンテンツになるでしょう。

 今後感染者数がどれだけ増えようと、菅義偉首相もIOCも五輪との関係性は認めないと思います。コロナという苦境のなかにあって成功した五輪という美しいエピソードで、噴出した問題をすべてうやむやにするのではないかと危惧しています。

金メダルをいくつ取っても感染者数は減らないし、浮き彫りになった問題も解決しません。だから五輪が終わった後もマスコミにはきちんと検証してもらいたい。スポーツの力が問題から目をそらす方向に発揮されないよう、僕たち国民も政府がやってきたことを忘れてはいけません。

(構成/編集部・福井しほ)

AERA 2021年8月16日-8月23日合併号