唐津駅に設置された「ゾンビランドサガ」のパネル (撮影/河嶌太郎)
唐津駅に設置された「ゾンビランドサガ」のパネル (撮影/河嶌太郎)
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八幡竈門神社に「鬼滅の刃」ファンらが奉納した絵馬 (撮影/河嶌太郎)
八幡竈門神社に「鬼滅の刃」ファンらが奉納した絵馬 (撮影/河嶌太郎)
(週刊朝日2021年8月20―27日号より)
(週刊朝日2021年8月20―27日号より)

 アニメや漫画の作品の舞台を訪ねる「聖地巡り」は、今や観光資源や地域振興として欠かせない存在になっている。コロナ禍の今年の夏は、作品をくまなくチェックして、イメージを膨らませてみては。

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前編/「ハイジ」で世界中からファン来訪も 「聖地巡り」の効果と魅力】より続く

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 コロナ禍の中でも、世界中で大ヒットし、国内でも観光に結びついた作品がある。「鬼滅の刃」だ。鬼がいる大正時代の日本を舞台にした作品で、主人公の竈門炭治郎(かまどたんじろう)が、鬼にされてしまった妹・禰豆子(ねずこ)を人間に戻す物語だ。テレビアニメが2019年4月から9月にかけて放送され大ヒットとなったほか、20年10月に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は日本映画史上1位の401億円、世界全体では517億円以上の興行収入を記録している。10月からは、続編となるテレビアニメの放送も予定されている。

 その社会現象ぶりは観光にも及んでいる。劇場版に登場した蒸気機関車のモデルが「国鉄8620形蒸気機関車」という大正時代の機関車といわれており、JR九州がこの機関車を動態保存しているつながりから、この機関車を使用した「SL鬼滅の刃」を本駅‐博多駅間で20年末に運行した。指定券が発売されて5分以内に完売する人気ぶりだ。

 また、作中の舞台として登場した東京の浅草でも、21年7月16日から9月26日にかけてコラボイベントを実施している。浅草にある「洋食屋ヨシカミ」など14店舗とコラボし、対象となる食事を注文するとオリジナルグッズが手に入るほか、「浅草ビューホテル アネックス六区」で期間中コラボグッズなどの販売をしている。

「鬼滅の刃」に登場する地名の多くは架空のものであるが、数少ない実在するモチーフから最大限観光に生かす取り組みが盛んだ。

 一方で、ファンの間で勝手に「聖地」にしてしまう例も相次いでいる。例えば、福岡県太宰府市にある「宝満宮竈門神社」、同筑後市にある「溝口竈門神社」、そして大分県別府市にある「八幡竈門神社」には多くのファンが訪れている。いずれも主人公の竈門炭治郎の「竈門」つながりからというのが理由で、作中に神社が登場するわけではない。ただ、「八幡竈門神社」では近隣に別府地獄めぐりで知られる「血の池地獄」や「かまど地獄」などがあり、境内にも鬼の伝承が残されている。また、主人公が使う必殺技の一つに竜が描かれるものがあり、それに酷似したデザインの竜が境内に描かれていることでも知られている。こうした点からファンの間では「鬼滅の刃」の世界観に浸れる空間として、「八幡竈門神社」の人気は高い。

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