渡辺:今回は大変でした。長ゼリフでまとまったセリフのほうが覚えやすいんですが、全部会話調なので、なかなか入ってこなくて。
林:高畑さんとのかけあい、楽しみです。二人のキャッチボールが。
渡辺:それが本当に楽しみです。高畑さん、キャッチボールが得意でしょうから。私はパートで働く優柔不断な主婦の役なんですけど、高畑さんは、ものすごく倹約家のパン屋のおかみさんを演じるんです。その対比もおもしろいし、高畑さんのセリフも、本当に老後の参考になりますよ。たとえば親の葬儀なんか、向こうは23万円ですませるんだけど、こっちはみえを張って夫の父親の葬式に300万円使っちゃって。さらに娘の結婚式に600万円かかったから、老後の資金が300万しかないんです。
林:300万じゃつらいですね。
渡辺:話が進むにつれ、徐々に泣ける話にもなっていきますが、そこまでの過程は、老後の資金をめぐって、おもしろおかしく描かれています。お客さんも、共感を持って見ることができるんじゃないかなと。
林:へ~え、おもしろそう。新橋演舞場の渡辺えりファンがすごく喜びそうなお芝居ですね。
渡辺:そうなってほしいですね。
林:これはちゃんとお客さんを入れるんでしょう?
渡辺:でも、最大でも60%ほどしか入れないそうなんです。
林:不要不急って何のことを言うんだろう。私、お芝居を見に行ったりしないと精神がおかしくなっちゃうんですけど。
渡辺:私も、劇場に行って芝居を見て気持ちが浮上するんですよ。それやってないと、病気になっちゃいそうです。
林:私、このあいだオペラを見に行ったんです。そうしたら、たまたま芝居好きの友達とお茶したら、その人、「劇場の座席に座って、場内が暗くなってワクワクするだけですごく幸せ」って。
渡辺:最近は閉塞(へいそく)感がありますからね。わかります、気持ちが。
林:私、先日、久しぶりに野田(秀樹)さんのお芝居(「フェイクスピア」)を見たんですよ。野田さんのお芝居ってほんとに難しくて、今回もやっぱり、よくわからなくて……。