頑張って勝ちたい、という気持ちは、悪いとは思いませんが、しかし、「勝つ」とは、つまり誰かを蹴落とすことですし、負けた人間を惨めだと見下ろしたい、そういう願望が潜んでいるはずです。何故、他者に勝たなければならないのか、というと、それは周囲の他者に認めてもらいたい、と望んでいるからです。
もし、自分の楽しみを持ち、自分がやりたいことが明確にあるのなら、他者に勝つ必要なんてどこにもありません。あなたの問題は、自分の楽しみを持っていない、ということなのです。人から褒められたいという子供のときの習慣から、早く脱却することで解決しそうな気がしますが、いかがでしょうか。
■諦められない夢があります
【相談2】
私は研究者になりたいと思っているのですが、勤務先の規定にひっかかり、大学院に通うことを諦めざるをえない状況にいます。だからといって会社を辞める決断ができるほど経済的余裕もありません。このまま会社勤めで人生が終わってしまうのか、と若干絶望しています。森先生だったら、どんなアクションを起こされますか?
【森博嗣さんの答え】
僕はあなたではないので、状況が正確に把握できませんけれど、まずいえることは、自分で判断できないような問題だろうか、という疑問です。とても大事なことではありませんか。自分の夢の実現を左右する判断です。違いますか? その判断をご自身よりも的確に判断できる人間がいるでしょうか?
こういった場合に、他人からのアドバイスが、どれほど役に立つものでしょうか?
夢が本物であるなら、会社を辞めるとか、経済的余裕とか、まったくの小事ではないでしょうか?
とにかく、絶望するような状況か、という点が不思議なのです。
絶望というのは、そんなに簡単にできるものではありません。あらゆる手を尽くし、自分ができるかぎ限りの実行をしたあとで、もし駄目だったときに、絶望なさってはいかがでしょう?
■忘れられない人がいる
【相談3】
昔好きだった人の話です。