笑福亭仁鶴さん(C)朝日新聞社
笑福亭仁鶴さん(C)朝日新聞社

 上方落語界の重鎮で、メディアでも幅広く活躍した笑福亭仁鶴さん(享年84)が17日、骨髄異形成症候群のため亡くなりました。

【写真】吉本大御所も認める「礼儀正しい芸人」トップはこの人

 現在、テレビには「ダウンタウン」を筆頭にあらゆる芸人さんが毎日出演していますが、吉本興業に所属する約6000人と言われる芸人さんの中で誰がトップなのか。

 その答えは明確で、ピラミッドの頂点は仁鶴さんです。ここは西川きよしさんでも、桂文枝さんでもなく、絶対的に仁鶴さんです。

 2005年ごろからネット文化の台頭などによりなくなりましたが、今から20年ほど前は電話帳くらい分厚い吉本興業のタレントプロフィールがテレビ局や新聞社などの関係者に配布するため作られていました。

 表紙をめくり、まず出てくるのは仁鶴さんの写真でした。1ページ目は必ず仁鶴さん。2ページ目が西川きよしさん、3ページ目が桂三枝(現・文枝)さんでした。

 多くの要素がフラットになるネットのプロフィールではなく、ページという概念があり序列が如実に表れる冊子のプロフィールではいつも1ページ目が仁鶴さん。もし、また冊子が作られるとしても、あまたの人気者の並びは時代によって変わるかもしれませんが、1ページ目だけは変わらず仁鶴さんだったはずです。

 これは単なるキャリアの問題ではなく、吉本を今のような大きな会社にした功労者は仁鶴さんであるという圧倒的な実績があるからです。

 今でこそ、お笑いと言えば吉本興業と言われる状況にもなりましたが、仁鶴さんが吉本興業に入った当時は、同じ大阪拠点の芸能事務所としては松竹芸能の方が圧倒的に上で、吉本はライバルと呼ぶのもはばかられるくらい差があったというのが現実でした。

 きら星のような人気者が松竹芸能にいる中、まさに日の出の勢いで出てきたのが仁鶴さん。多い時には週に20本近くのレギュラー番組を持ち、全国的にメディアで活躍する上方落語家としての道を切り開きました。

 2018年5月、毎日放送での明石家さんまさんの特別番組。そこで月亭八方さんが全盛期の仁鶴さんの人気ぶりを端的に表すエピソードを明かしていました。

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中西正男

中西正男

芸能記者。1974年、大阪府生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当として、故桂米朝さんのインタビューなどお笑いを中心に取材にあたる。取材を通じて若手からベテランまで広く芸人との付き合いがある。2012年に同社を退社し、井上公造氏の事務所「KOZOクリエイターズ」に所属。「上沼・高田のクギズケ!」「す・またん!」(読売テレビ)、「キャッチ!」(中京テレビ)、「旬感LIVE とれたてっ!」(関西テレビ)、「松井愛のすこ~し愛して♡」(MBSラジオ)、「ウラのウラまで浦川です」(ABCラジオ)などに出演中。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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