効果的な感染対策が打ち出せない菅首相(左)と政府の対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
効果的な感染対策が打ち出せない菅首相(左)と政府の対策分科会の尾身茂会長 (c)朝日新聞社
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(週刊朝日2021年9月3日号より)
(週刊朝日2021年9月3日号より)

 新型コロナウイルスの感染拡大に打つ手なしの菅義偉首相。限定的でもロックダウンを視野に入れてよさそうだが、二つの選挙を見据えた菅首相にはその選択は無理なようだ。

【シミュレーション結果】限定的ロックダウンをした場合の感染者数と重症患者の推移はこちら

「30代、40代の患者に『最悪のケースを覚悟してください』と言うのは本当につらい」

 こう話すのは、首都圏を中心に在宅医療クリニックを運営する悠翔会の佐々木淳医師だ。

 従来株に比べて感染力が強いデルタ株は、若い世代でも重症化するケースが増えている。佐々木医師が続ける。

「自宅療養をしている人の診療に行くと、酸素飽和度が90%を切っている人がいる。本来なら即入院ですが、ベッドに空きがない。酸素を吸入し、炎症を防ぐためのステロイド剤を投入しても病状が悪化する人がいる」

 9万6709人。これは厚生労働省が8月20日に発表した新型コロナウイルス感染で自宅療養をしている人の数だ(18日午前0時時点)。前週から2万2646人の増加で、10万人を突破するのは時間の問題だ。

「今の東京は、表向きは平和に見えます。しかし、実態は新型コロナで適切な医療を受けられない人がたくさんいる。感染爆発という“がれき”の下に、何万人もの人が埋もれている状態です」(佐々木医師)

 千葉県柏市では、新型コロナに感染した30代の妊婦が、体調が急変したため入院先を探したが、計9カ所の医療機関に満床などを理由に断られ、入院先がみつからないまま自宅で出産し、新生児が亡くなった。

 20日には全国知事会がオンライン会議を開き、「緊急事態宣言で効果を見いだせないことが明白」と指摘。増え続ける感染者を抑えるため、ロックダウン(都市封鎖)のような人流を減らす対策の実施を政府に求めることで一致した。

 だが、菅義偉首相はロックダウンに否定的だ。官邸関係者はこう話す。

「ロックダウンは経済への影響が大きいわりに、感染者数を抑える効果は少ない。菅首相はそう考えている。選挙を前に、私権制限に慎重な公明党への配慮もある。ロックダウンは副作用が大きく、補償金が莫大(ばくだい)になることも消極的な理由でしょう」

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