「発車前に横のものに気を取られた、乗っているときにマスクがずれてしまったなど、首を動かしてしまうことは考えられる。そのような不適切な姿勢で強いGがかかると首を痛めるということはありえます」
富士急ハイランドでは1983年に世界一の最高速度105キロのジェットコースターを導入したほか、96年には最高速度130キロ、01年に最高速度173キロと世界一速いマシーンを導入し続けてきた。
「事業者側はスピードや急加速でスリルを追求することで利用者の満足度を上げる動きがあったのは事実。一方で、何かが起こったとき、大ケガをするリスクも高まっているのも間違いはありません」(先の専門家)
人間は慣れてしまうとさらに強い刺激がほしくなるもの。例えば、CNNによると中東のサウジアラビアでは、ド・ドドンパを超える最高時速250キロのローラーコースターの開発がすすめられているという。
実は、ジェットコースターに限らず、遊戯施設等での事故やケガは珍しいものではない。国土交通省によると、2010年12月以降、10年間で27件の事故が報告されている。報告は全治1カ月以上のケガ人が出た事故やケガ人がいなくても重大事故につながる可能性があったものが対象だ。よみうりランド(神奈川県)や東京ディズニーシー(千葉県)、東京ドームシティアトラクションズ(東京都)など多くの利用者でにぎわう身近な施設でも事故が起きていた。
直近の事故では、「ザ・ブーン」(秋田県)では20年12月にウォータースライダーで高校生が溺死する事故が起きている。助走をつけウォータースライドに入り、スタート地点の滑走面に頭部を強く打ち付け、意識を失うなどの状態になったことが原因とみられている。
テーマパークコンサルタントの清水群さんは遊戯施設などの事故の要因は、大きく「メンテナンス不良」と「運用の方法」に分けられるという。
鷲羽山ハイランド(岡山県)では19年5月、走行中のジェットコースターから席の部分が落下する事故を起こしている。幸い、ケガ人はいなかった。ネジの緩みなどが原因だったとされる。07年に起きたエキスポランド(大阪府)の死亡事故もメンテナンス不良が原因だとされる。