――他に手段がなく、切り札のワクチン接種も遅れるのなら、感染爆発に備えた準備をするべきだが、その議論がほとんどない。「最悪の事態」に対応するために今の法制度で決定的に欠けているのは、強制力を伴う外出制限(ロックダウン)など、個人の行動制限を認める法律と万全な補償措置の備えだ。……国会の議論には時間が必要だ。だからこそ、急がなければならない――

 しかし、結局、この議論はなされないまま、国会は閉会した。そして、今、感染拡大を止める手がない非常事態に陥っている。ようやく、立憲民主党などが、私権制限を含む強い措置をと叫び始めたが、菅自民党は、国会を開こうとさえしない。

 横浜市長選で勝った負けたとか、総裁選や解散総選挙がどうなるかなどと言っている間に、最悪の事態は、既に始まってしまった。これからでは、まさに泥縄対応だが、それでもなお、急がなければならない。今すぐに国会を開いて、ロックダウンと必要な救済制度について議論せよと、国民は大きな声を上げなければならない。

週刊朝日  2021年9月10日号

古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など

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