■夫婦の負担は「等分」
国内では、そんな環境の企業はまれだろう。「ソニーは働きやすいんじゃないですか?」と聞いてみた。
「世の中で話題になることに対して、ソニーのほうがだいぶ先行して取り組んでいる印象ですね」という。
清田の娘は、現在6歳だ。ソニーでは、コロナ禍の前から月に10日のリモートワークが認められていた。夫婦で10日ずつリモートワークをすれば、1カ月間、ほぼ毎日どちらかが自宅で仕事をすることができた。そして、在宅勤務をする方が、保育園の送迎や夕食の支度を担当した。
コロナ禍に入り、リモートワークの日数の上限がなくなったことで、清田は出社することはほとんどなくなった。朝、保育園に子どもを送った後、帰宅してPCを開き、仕事を始める。月金は清田が5時から5時半の間に仕事を終え、子どもを迎えにいって家事育児をする。火木は夫が早く仕事を切り上げる。その日は、清田は在宅残業が可能で、子どもの世話や夕飯は夫に任せることができる。
女性の社会進出が進んだ現在でも、これほど夫婦の家事育児の負担を「等分」に分ける夫婦は珍しいのではないだろうか。ともにタフな仕事に就きながらも、仕事と家庭を両立できるのは、互いの仕事を尊重しているからだろう。
清田は現在、社内で二つの業務を掛け持ちする。一つは、ソニーグループモビリティ事業室クラウドサービス開発部でのaibo(エンタテインメントロボット)、Airpeak(ドローン)、VISION-S(EV)などを支えるクラウドサービスの開発だ。
もう一つは、同R&Dセンター Tokyo Laboratory 17での、クラウド関係やデータ分析の業務である。前者が「主務」でメイン、後者が「兼務」で、いわばサブの業務である。
仕事は変わらず、「HCD(人間中心設計)」に携わる。aiboでは、人間ドックさながらの“aiboドック”のサービス開始に携わった。ユーザーの気持ちや、面白がってもらえる体験を考え、aiboの検査項目や検査結果のカルテの仕様を練った。例えばaiboの「瞳」は「眼科」、「鳴きごえ」は「耳鼻咽喉科」の説明がある。こうした細かい調整や気の利いた工夫が、UX(ユーザーエクスペリエンス=顧客体験)を高めていく。