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※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「〇〇を食べれば健康になる」というフレーズを、以前は新聞、雑誌、テレビでよく見かけました。最近は減ってきていますが、特定の食材を食べて健康になるとか病気が治るというのは、大体の場合、医学的に間違いです。近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授の大塚篤司医師が解説します。

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 世の中にはたくさんの健康法が存在します。お手軽なものから値段がかかるものまで、調べ始めるとキリがありません。医師から見れば明らかに間違っている健康法でも、マスコミで紹介されると多くの人が影響を受けます。さらに、家族や友人が実践している健康法があると自分もやってみたくなるのではないでしょうか。

 かくいう私も「間違った医療情報」に振り回されたこともあり、他人のことをとやかく言うことはできません。

「両腕をあげて寝ると内臓が鍛えられるんだって」

 小学生のころに聞いた母親の言葉はとてもインパクトがありました。

 私はその日から意識して両手をあげて寝るようにし、10年以上継続していました。その後、医学部に入り医者となり、両手をあげて寝たところで内臓は鍛えられないと理解しました。今でこそ意識して両手をあげることはなくなりましたが、癖でときどき両手をあげて寝てしまうことがあります。

 医学的な知識がある現在も、習慣となってしまった健康法をもとに戻すのは難しい。私の場合は笑い話で済む程度だから良かったものの、深刻な被害を受けた人もいます。

 今でこそ減ってきましたが、「〇〇を食べれば健康になる」というフレーズは新聞、雑誌、テレビでよく見かけました。

 食事と健康は密接に関わっているものの、特定の食材を食べて健康になるとか病気が治るというのは、大体の場合、医学的に間違いです。

「しいたけの成分が健康に良いんです」

 20年ほど前、テレビ番組でしいたけを使った健康法が紹介されました。

「奥さん、生のしいたけ汁を飲むことで健康になりますよ」

 テレビ番組の司会者が言葉巧みに紹介したことで、その日はしいたけ汁を飲む視聴者が増えました。

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大塚篤司

大塚篤司

大塚篤司(おおつか・あつし)/1976年生まれ。千葉県出身。医師・医学博士。2003年信州大学医学部卒業。2012年チューリッヒ大学病院客員研究員、2017年京都大学医学部特定准教授を経て2021年より近畿大学医学部皮膚科学教室主任教授。皮膚科専門医。アレルギー専門医。がん治療認定医。がん・アレルギーのわかりやすい解説をモットーとし、コラムニストとして医師・患者間の橋渡し活動を行っている。Twitterは@otsukaman

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