9月1日は防災の日。避難時の備えで忘れてはならないのが「食」の確保だが、日本は課題だらけだという。非常時を食べて生き抜く知恵とは。
【実際の様子】東日本大震災の発生翌日、配給には長蛇の列ができていた
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「災害が起きたとき、まず最初の3日間は人命の救助が最優先。避難所の食の問題は後回しにされます。食料支援が安定するまで、自分たちで生き延びないといけないんです。そのためにも災害時における食の知識を持つことが大事です」
そう語るのは、長年食育に携わってきた中村詩織さん。一般社団法人日本食育HEDカレッジを主宰し、災害時に食のリーダーとなる人材育成にも努めている。
中村さんが活動を始めたきっかけは、2016年の熊本地震。仲間に呼びかけて集めた物資を送ったうえ、現地に入った。
まず訪ねたのは、物資の集積所となっていた公民館。そこで目にしたのは、人手不足のため各避難所に届けられぬまま放置された支援物資だった。特に食料は、腐敗して山積みになっていたという。
被災者支援に食の視点が欠けている実態に衝撃を受けた中村さんは、現地でリサーチを行い、
「食の知識のあるリーダーが指揮を執ることが大事だと感じました」
帰京後、中村さんは世界各国で災害時に食の問題がどう取り扱われているかを学んだ。
「最先進国のイタリアでは各地にキッチンカーが備えられ、有償ボランティアが定期的に訓練を行います。災害が起きたら有償ボランティアを乗せたキッチンカーが現地に向かい、パスタ、肉や魚の料理を作って提供するのです。精神的なケアのため、食事を楽しんでもらうよう、ワインを出すこともあるそうです」
■「お湯がない」とカップ麺出さず
わが国の後進性は明らかだが、少しでも改善できればと願い、中村さんは日本での問題点と解決法を列挙する。
(1)避難者に平等に渡すことを優先するあまり、食料を廃棄する
「たとえば100人いる避難所におにぎりが99個届くと、不平等になるからといって99個全てを廃棄するケースが見受けられます。人数分の個数がないときは、大鍋に入れて雑炊を作って分けるという方法もあることを知ってほしいです」