■影響を受けた名作

 実は著名な両親の存在が当初マイナスに働いた、と告白する。

「最初に周囲に映画のプロジェクトを話したときの反応は『両親が俳優だからでしょ? だから突然、映画を撮りたいと言い出したのでしょ?』というものでした。そんなことはまったくないのに。私はある意味、まわりから信用されない状況に置かれてしまったんです。いまだに嫉妬やいわれのない批判の対象になることもあります。解決方法は気にしないこと! 誰もが誰かの子どもであり、両親を選ぶことはできないのですから」

 もとより七光りで成功するほどこの世界は甘くない。そんなノイズをものともせず、ほとばしる才能で世界を驚嘆させた。

 スザンヌの佇まいは14歳のシャルロット・ゲンズブールが主演した「なまいきシャルロット」(1985年)を彷彿とさせる。

「もちろん影響を受けています。最初に観たとき『こんなに若い女性が映画に出ている!』とショックを受け、自分も演技をしたいと思ったんです。それに自分ではわからないのですが、子どものころからよく周囲に『似ているね』と言われました」

 モーリス・ピアラ、エリック・ロメールなど影響を受けた監督は数限りない。スザンヌが劇中で読むボリス・ヴィアンの本は自身が16歳のときの愛読書だ。知性と才を育み、俳優だけでなくセリーヌやシャネルの新たなミューズにも抜擢されている。

「今後も俳優と監督、どちらもやっていきたい。ただ脚本に時間をかけるので、次の監督作はしばらく後になりそうです」

(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2021年9月6日号

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