スリランカ国籍のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が、名古屋出入国在留管理局の施設で亡くなった問題は、わが国の入管体制のずさんさを浮き彫りにした。過去にも同種の事案が起きていながら、なぜ悲劇は繰り返されるのか。遺族側の代理人である指宿(いぶすき)昭一弁護士に聞いた。
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「ウィシュマさんは施設の中で体調が悪化していたにもかかわらず、点滴も満足な治療も受けられず、仮放免も認められなかった。入管は言わば、彼女を見殺しにしたんです。人の命を何だと思っているのか」
こう憤る指宿弁護士は、生前の彼女と定期的に面会していた支援団体「START」の相談役的な立場にある。
2017年6月、日本で英語教師になることを夢見て来日したウィシュマさんは、千葉県内の日本語学校に入学するが、翌年2月ごろから休みが目立っていく。4月下旬には学校からの電話連絡に応じなくなり、6月に除籍処分となった。後に本人は支援団体との面会で、「学費を稼ごうとしたが間に合わなかった」と説明している。
在留資格を失ったウィシュマさんは昨年8月、自ら交番に出頭し、不法残留で逮捕された。当時、新型コロナウイルス感染拡大の影響からスリランカ行きの飛行機は就航がなく、名古屋市内の入管施設に収容された。
いったんは帰国に同意したものの、支援者との面会で「(収容前に)同棲していた男性から『スリランカに帰ったら罰を与える』という手紙を受け取った」などと訴え、残留を希望するようになったという。
今年1月には、一定の条件のもとで拘束を一時解く「仮放免」を申請するが、不許可に。
法務省の外局である出入国在留管理庁が8月10日に公表した最終報告書では、その理由について「仮放免を許可すれば、ますます送還困難となる」「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」と入国審査官が判断したとある。
「入管はウィシュマさんが帰国の意思を覆したために、長期収容を行って本人を精神的・肉体的に追い込み、意思を変えさせようとした。いわば『拷問』と言っていいでしょう」(指宿弁護士、以下同)