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(週刊朝日2021年9月17日号より)
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 口腔ケアと健康寿命の延伸には関係があることがわかっている。

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 高齢期に病気で寝たきりになったり、認知症になったりして、自分では歯を磨けなくなったときはどうすればいいのか。家族や介護スタッフにケアを頼むこともできるが、虫歯や歯周病には対応できない。そんなとき頼みの綱となるのが、訪問歯科診療サービスだ。

 訪問歯科診療は、脳梗塞による麻痺や認知症などで通院が困難な人の自宅(あるいは高齢者施設)に、歯科医師や歯科衛生士が定期的に訪れ診療を行うサービスだ。

 東京都大田区にあるKデンタルクリニックでは、毎週延べ100人前後の訪問診療に対応している。同院の田邉弘毅院長は、「70代から90代の後期高齢者を介護されているご家族の方から依頼を受けることが多い」と話す。

「『歯がぐらつくから診てほしい』といったご相談が多いですね。認知症になると、『歯を磨く』という行為自体を忘れてしまうこともあります。また、体に麻痺がある場合は、自分では磨けていると思っても汚れが残っていることが多い。特に、口に麻痺があると、食べ物のカスが口内にたまっていても気づかず、誤嚥性肺炎を引き起こす原因となることもあります」

 また、歯がない、噛み合わせが悪いことで、全身に症状が及ぶケースも多いそうだ。

「噛めないことで、認知症が悪化することもありますし、食事がおいしく感じられず痩せてしまう方もいらっしゃいます。また、奥歯を食いしばれないせいで、手に力が入らなくなったり、うまく歩けなくなってしまうことも。『歯がなくて噛めない人は転倒リスクが上がる』という統計データもあるくらい、歯の有無は体全体のコントロールに深くかかわっているんです」

 症状を悪化させないために、どんな治療ができるのか。

 田邉院長によれば、虫歯の切削や歯石除去、薬剤等による歯周病治療、審美歯科(被せ物や詰め物)など、院内でできる治療は訪問診療でもほとんどできるという。また、歯がない場合は、入れ歯を作ることも可能だ。ただし、外科手術が必要なケースやインプラント治療は、現時点では対応できない。

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