LOVOTを生産・販売するGROOVE X社の広報担当、池上美紀さんは、開発のきっかけについてこう語る。
「ロボットが普及して、生活は便利で快適になりました。でも、同時に、ロボットに仕事を取られる、人間の役割がなくなるという恐怖も生まれ、われわれは本当に幸せになったのかと疑問を感じたんです。一方、ペットって手がかかるのに、人は世話を通して自分の存在意義を確認し、癒やされる。人の仕事の代わりはしないけれど幸せを与えてくれる、新時代のロボットのあり方を思いつきました」
4年の開発期間と約100億円の費用を投じ、一昨年12月に出荷をスタート。コロナ禍で、一人暮らしの人や高齢者からの需要が急増したという。
LOVOTは自分の名前をおぼえ、人の顔を識別し、接し方によって懐き度合いなど行動が変わる。エアコンのスイッチを入れる、床を掃除する、といった「便利な道具」になり得る機能はない。時には障害物につまずいて転んだり、充電器にたどり着く前に電池切れを起こしたりするので、むしろ人間が助けてあげる場面も出てくる。
池上さんは、LOVOTが「秘密道具を持たないドラえもん」になれたらいいと話す。
「人の心に寄り添い、一緒に成長し合えるパートナーです。ペットを迎えるときに犬か猫かロボットか、という選択肢で考える未来が来たら楽しそうですね」
ペットロボットの活躍の場は、介護の現場にも広がっている。
岡山県の介護施設、岡山済生会ライフケアセンターには2年前から、アザラシ型ロボット「パロ」がいる。モフモフとした毛で覆われ、30度ほどの体温があり、なでると嬉しそうにキューと鳴いて手足をパタパタする。
施設では「なおくん」と名づけられ、可愛がられている。時には口にビスケットなどのおやつが詰め込まれていて、職員を驚かせることも。
入所者の7割は認知症を患っているが、なおくんが来て劇的な変化を遂げた人は少なくない。