「自分の家の住所と電話番号を覚えていない」。当人曰く、覚えられないのでなく覚えない、のだそうです。その代わり、巨人の選手なら愛車の車種から年俸、夫人の名前までみんな頭に入っています。
「すぐにロケット花火に火をつける」。秘密基地にロケット花火を隠していて、外ではそれを持ち歩いて手持ちで発射してきます。喜怒哀楽をロケット花火に乗せて表現するようです。ピュー!という発射音を聞くと涙が出る、と言ってました。
「野良犬と話せる」。当人曰く『家来』にしている野良犬が2匹いましたが、『犬千代』と同じ名前で呼んでいました。だから「犬千代!」と呼ぶと同時に吠えます。
「低学年の『家来』がいる」。自分の弟とその友達の腰に紐をつけて、鵜飼いのようにして引き連れていました。ちょっとした問題になり、すぐにやめさせられてました。
「マンガ本を貸すと必ず青のりと油脂で汚れて返ってくる」。ポテチの『のりしお』を食べながら読むのでしょう。ファミコンソフトはマジックで『なかた』と書いた跡が消されて返ってきました。私に借りたモノを自分のと思い込んで名前を書いてしまったようです。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。この連載をまとめた最新エッセイ集『まくらが来りて笛を吹く』が、絶賛発売中
※週刊朝日 2021年9月17日号