日中首脳会談の冒頭で握手する岸田文雄首相と中国の習近平国家主席(17日、バンコク)
日中首脳会談の冒頭で握手する岸田文雄首相と中国の習近平国家主席(17日、バンコク)
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 岸田文雄政権が崩壊寸前だ。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と自民党との癒着問題をきちんと解決できない。物価高対策も評判が悪い。そのうえ、葉梨康弘法相が死刑をめぐる軽率な発言で辞任に追い込まれるなど、政権はフラフラだ。自民党の伝統派閥・宏池会を率いる「本流」の岸田首相だが、肝心の自民党の力そのものが弱まっている。政治ジャーナリスト・星浩氏が、岸田政権がダメな理由を解剖し、その行く末を展望する。

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 岸田首相は12日から8日間の日程でカンボジア、インドネシア、タイを訪問した。国際会議の合間にバイデン米大統領や習近平中国国家主席らと相次いで会談した。得意の外交で求心力を回復したいところだが、帰国の首相を待ち受けていたのはかつてない難局だ。

 2021年の衆院選と22年の参院選を勝ち抜いた岸田首相は当面、国政選挙がない「黄金の3年」を手にしたはずだった。だが、安倍晋三元首相が銃撃事件で死去し、旧統一教会問題が拡大する中で、岸田政権は急速に求心力を失ってきた。山際大志郎前経済再生相の更迭に続き、葉梨氏が「法相は死刑のはんこを押して昼のニュースでトップになる地味な仕事」などと発言し、与野党から批判されて閣僚を辞任。政権はさらに行き詰まっている。朝日新聞が11月中旬に実施した世論調査でも支持率は発足以降最低の37%に落ち込み、不支持率は最高の51%に達した。

 岸田政権がダメな理由は何か。大きく3点あげられる。第一に、岸田首相自身の資質である。岸田氏は、安倍氏や菅義偉前首相のような「強権体質」はない。「聞く力」を信条としている。だが、その半面、優柔不断で迅速な決断ができない。安倍氏の国葬は、麻生太郎副総裁らの意向も踏まえて素早い決定だったが、法的根拠や国民感情などを考えず、脇の甘い判断となった。

 岸田首相は山際氏について、いったんは続投を決めていたのだが、世論の批判の高まりを受けて更迭に舵を切らざるを得なかった。葉梨氏についても、国会で「続投」を明言した直後の更迭で、自民、公明両党幹部からも「首相の腰が定まらないのが深刻な問題だ」という反応が出ている。

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