自民党はかつて、三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘各氏)や安竹宮(安倍晋太郎、竹下登、宮澤喜一各氏)、YKK(山崎拓、加藤紘一、小泉純一郎各氏)といった人材が競い合っていた。しかし、安倍「一強」政権と後継の菅政権が続いた中で、政策論議は低調となり、党内の活力が失われた。その結果、岸田首相を支える自民党の態勢は弱体化している。それは安倍・菅政治の負の遺産ともいえるだろう。
政権をどう立て直すのか。いまさら首相自身が「決断型」に変身するのは難しい。自民党の人材レベルを急に上げるのも無理だ。となると、首相周辺の態勢を強化していくしかない。それは首相自身も考えているようだ。
寺田稔総務相が政治資金の疑惑をめぐって野党から追及を受け、20日に官邸を訪れて岸田首相に大臣職の辞表を提出した。山際、葉梨両氏に続く「辞任ドミノ」となったうえ、首相の側近でもある寺田氏の辞任は政権にとって大きな痛手だ。そのため首相の周辺では、来年1月からの通常国会前に内閣改造・自民党役員人事に踏み切って、高木国対委員長を交代させる案も浮上している。
岸田政権は今後、来年度予算編成を控え、増額する予定の防衛費の財源を手当てしなければならない。国家安全保障戦略など安保関係3文書を改定し、自衛隊による反撃能力の保有などを打ち出す必要がある。旧統一教会による高額寄付の被害者救済のための法整備も待ったなしだ。物価高、景気低迷が続くようだと、国民の不満はいっそう高まってくるだろう。内閣改造や自民党役員人事でこの難局を乗り切れるとは思えない。その場合、岸田首相自身のリーダーとしての資質が正面から問われてくるのは確実だ。それができなければ、来年5月の広島サミットでの勇退も現実味を帯びる。
※週刊朝日 2022年12月2日号