そんななか、それなりのポジションを維持できているのが野々村なのだ。これは先輩アイドル・坂上とし恵(現・野々村俊恵)との結婚で恐妻家キャラを確立できたことも幸いしているが、それだけではない。彼があるジャンルのパイオニアだからだろう。
それは「おバカ」である。じつは当時、女性アイドルが続々とバラドル化していったが「おバカ」ではなく「天然」と呼ばれていた。つまり「おバカ」がまだ恥ずかしかった時代であり、男性アイドルがそういうキャラになることは珍しかったのだ。その珍しい方向に彼は突き進んでいった。それまでは芸人の専売特許だった「おバカ」に、アイドルの世界から飛び込んだ元祖ともいえる。
そこに目をつけたのが、86年にスタートした「ふしぎ発見」。そして、島田紳助だった。彼は自分の番組に野々村を呼んでいじるのが好きで、2005年に「クイズ!ヘキサゴンII」(フジテレビ系)が始まるときにもレギュラーに起用した。この番組は多くのおバカタレントを生み、一大ブームを築くが、その橋渡し的役割を果たしたのが元祖でもある野々村だったわけだ。
とはいえ、ヘキサゴンファミリーの大半が芸風を変えていったように、おバカをずっとやり続ける人はそんなにいない。スポーツなどの他の世界で成功した人が副業的にやるならともかく、おバカとしていじられ続けるのはあまり心地よいものではないのだろう。
関西のお笑い界には、アホの坂田(坂田利夫)というレジェンドがいるものの、野々村は芸人でもないのにそれをやり続けているという異色の存在といえる。
ところが、2011年、紳助が引退。これはなかなかの痛手だったはずだ。その後、娘の香音がデビューすると、すかさずダメパパ的なキャラをアピール。ただ、そのままではジリ貧となっていくかとも思われた。
しかし、ここで追い風が吹く。長年の友人でもある坂上忍の再ブレークだ。2014年、坂上が「いいとも」のあとに始まった「バイキング」(「バイキングMORE」の前身番組)の曜日MC(1年後から全平日担当の総合MC)におさまると、野々村も呼ばれることに。故郷ともいうべきフジテレビの昼に戻れたうえ、今度はワイドショータレントとしての居場所を得ることができた。