とはいえ、その後も彼はトウの立った若者キャラであり続けている。「ふしぎ発見」でもいまだに若者的なイメージだし、そのポジションを30数年間、ゆずっていないのである。

 これは長寿番組あるあるでもあり、たとえば「水戸黄門」(TBS系)におけるおバカキャラ・うっかり八兵衛などに通じるものだ。あれが当たり役となった高橋元太郎も元アイドル(スリーファンキーズ)で、29歳から30年間、黄門役が代替わりしても演じ続けた。うっかりぶりでその場をなごませる愛されキャラの野々村も、同じ系譜といえる。

 ただ、冒頭で触れた今回の「うっかり」は賛否両論を生み、いつもと違う感じに受け取られた。番組が用意した台本によるヤラセなのではという説も浮上。30代で禁煙したにもかかわらず、症状が悪化したのは喫煙者だからといううわさも流れた。また、57歳という、けっこういい歳であることも広く知られてしまったし、これから見た目も一気に老け込む可能性がある。彼がいじられているところを面白がる、という世間の反応も変化するかもしれない。

 はたして、野々村真はうっかり八兵衛のままでいられるのか。最初の東京五輪が行われた1964年生まれの同期でもある筆者としては、今後も応援したい気持ちなのだがーー。

宝泉薫(ほうせん・かおる)/1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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