愛子さまを連れ、藤城清治さんの影絵展を訪れた雅子さま=2002年10月15日、東京・銀座の教文館(c)朝日新聞社
愛子さまを連れ、藤城清治さんの影絵展を訪れた雅子さま=2002年10月15日、東京・銀座の教文館(c)朝日新聞社

 愛子さまのはじめてのお出かけ先だった教文館の『藤城清治影絵展』が、20年の歴史に幕を閉じる。計21回開催された影絵展には、雅子さまがお忍びで訪れたほか、美智子さまが鑑賞されたこともある。思い出とともに振り返った。

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 影絵作家、藤城清治さん(97)の作品展(影絵展)は2002年から、銀座・教文館の「ウェンライトホール」で毎年開かれてきた。教文館の改装にともない、同ホールがその役目を終えることから、影絵展も今年が最後となった。

 幻想的な世界観で知られる藤城さんの作品。メルヘンな絵柄だけでなく、そこ投影された藤城さんの温かなまなざしも、幅広い年齢の人々を魅了してきた。

 「戦争を経験した藤城先生は、弱い者に寄り添うヒューマニズムが根底に流れていて、一貫して変わらない気持ちを保ち続けていらっしゃる」(教文館渡部満社長)

藤城清治さん(2019年、撮影・岩下明日香)
藤城清治さん(2019年、撮影・岩下明日香)

  雅子さまにとっても教文館で開かれる影絵展は特別な場所だった。雅子さまは、御用邸以外で、愛子さまのはじめてのお出かけ先に教文館の影絵展を選び、2002年10月15日に母子で足を運んでいた。

 藤城さんは、『週刊朝日』(2019年5月17日号)のインタビューで、影絵展に訪れた雅子さまと交わした会話をこう話していた。

 「『(愛子さまに)一番美しいものを見せたい』と(雅子さまが)はっきりおっしゃったのを覚えています。その言葉を嬉しく感じました」

  当時、影絵に描かれるこびとや動物に手を伸ばす愛子さまを「だめだめ」と雅子さまが諭す姿に、藤城さんは「アクリル板の上からなら大丈夫ですよ」と声をかけた。少しの間だけ侍従の人が愛子さまを抱くこともあったが、ほとんど雅子さまが抱っこしたまま30分ほど鑑賞されていたという。愛子さまのご誕生をお祝いして制作した『夢がとぶ』の前に雅子さまは足をとめていたそうだ。

 2007年、2018年にも雅子さまはお忍びで教文館を訪れるなど、度々藤城さんの影絵を鑑賞されてきた。

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