竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
竹増貞信/2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長
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「コンビニ百里の道をゆく」は、53歳のローソン社長、竹増貞信さんの連載です。経営者のあり方やコンビニの今後について模索する日々をつづります。

【写真】北海道の厳しい冬。雪の斜面を歩くエゾシカ

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 大阪で生まれ育ち、東京に暮らしている私ですが、他の日本の土地で「ここに住んでみたいなあ」と思うところがたくさんあります。「どこがいちばんいい?」と聞かれると迷うくらいです。

 行ったことがある中から言えば、たとえば福岡。一年中気候もいいし、いつ行っても食べ物がおいしいですよね。神戸も好きです。夜景がきれいで、繁華街も楽しくて異人館もありちょっとエキゾチックで、食べ物も餃子や豚まんなど何から何までおいしい。大阪人の私にとって、近くて憧れの街です。

 でもいちばん憧れるのは、北海道かもしれません。札幌や函館もいいのですが、もっと強烈な北の大地の自然にさらされているような、網走や中標津などでの生活に強く惹かれます。

 網走には学生の頃、冬に行ったことがあるんです。砕氷船に乗りに行ったのですが、その後、春にも網走に行く機会がありました。オーナーさんの友だちの料理屋で北海道のお酒を飲みながら、網走港でその朝に水揚げされた海産物や、とれたてのアスパラガスを使った料理を食べることができました。大自然から生まれた山海の恵みを堪能できたことは、いい思い出です。

北海道の厳しい冬。雪の斜面を歩くエゾシカ=2月、北海道登別市
北海道の厳しい冬。雪の斜面を歩くエゾシカ=2月、北海道登別市

 厳しい気候にも惹かれます。学生の時に体験した冬は厳しい寒さが印象的でしたが、その「閉ざされた冬」から春になって一気に解放され、樹々に新緑がつき始める。そこに生命の息吹を感じたんです。

 冬が厳しい分、ギャップで春も夏も魅力的ですし、四季折々の大自然を堪能できるんですね。つまり春の感動を味わうためには冬を抜けないといけない。そんなことも気づかせてくれます。

 いちど一年を通じて「住んで」感動を味わってみたいのですが、現実的には難しいのが残念です。せめて春夏秋冬に一度ずつ、訪れてみたいなと思います。

竹増貞信(たけます・さだのぶ)/1969年、大阪府生まれ。大阪大学経済学部卒業後、三菱商事に入社。2014年にローソン副社長に就任。16年6月から代表取締役社長

AERA 2022年11月28日号